【1326号】BOY&BOYISH 4 海老楽大学地域活動部   令和080923

 


BOY&BOYISH

学園祭の小さなユニットから、地域と大学を動かす学内会社へ

すべての始まりは、海老楽大学の学園祭でした。

佐藤陽太と林 明、愛称リン。

二人はもともと、同じ大学に通う友人でした。

陽太は力強く安定した動きが得意。
リンはターンや細かな身体表現に優れ、しなやかなダンスを得意としていました。

その対照的な個性に目をつけたのが、企画や演出を得意とする山田カイルです。

さらに、広報や写真、記録を担当する田中彩花が加わりました。

カイルは二人を見て、

「違うから面白い」

と考えます。

陽太はスラックス。

リンはプリーツスカート。

同じ制服風衣裳でありながら、シルエットはまったく違う。

こうして生まれたのが、

BOY&BOYISH

でした。


リンにとってのBOYISH

リンにとって、プリーツスカートは単なる舞台衣裳ではありませんでした。

中学時代。

リンはいじめを経験しています。

そのとき、そばにいてくれたのが陽太でした。

陽太は大げさに「助けてやる」と言ったわけではありません。

ただ、必要なときに隣にいた。

それがリンにとって大きな支えになりました。

大学へ進学してからも、リンはすぐに過去から自由になれたわけではありません。

しかし、学園祭のステージ。

地域の人たちとの交流。

仲間からの信頼。

それらを通して、少しずつ自分らしさを取り戻していきます。

最初は、

「どうして男性なのにスカート?」

と聞かれることもありました。

しかし活動を続けるうちに、その質問は減っていきました。

地域の人にとって、

「スカートを履いている人」ではなく「リン」

になっていったからです。


学園祭から地域へ

BOY&BOYISHは、学園祭だけで終わりませんでした。

地域イベント。

商店街。

こども園。

高齢者向け行事。

祭り。

海老楽テレビ。

活動の場はどんどん広がっていきます。

彩花は写真や記事で記録し、

カイルは次の企画を考える。

陽太とリンは、歌とダンスだけでなく、地域の人と直接話すことを大切にしました。

ここでカイルは、はっきりと方針を決めます。

「有名になってもいい。でも、有名になることを目的にしない」

BOY&BOYISHは、芸能活動そのものを目標にするのではなく、

地域の中にいる学生ユニット

として成長していきました。


海老楽テレビと大学公認

地域活動が注目されるようになると、地元の海老楽テレビから声がかかります。

商店街を歩く番組。

地域イベントの紹介。

子どもや高齢者との交流。

テレビに出ても、二人の距離感は変わりませんでした。

店主に普通に声をかけられ、

子どもに名前を呼ばれ、

高齢者とお茶を飲む。

その姿がさらに地域へ広がっていきます。

やがて海老楽大学も活動を正式に評価。

小さな同好会的活動だったものは、

海老楽大学 地域活動部

として大学公認の組織になりました。


蓮と悠真

そこへ加わったのが、

高橋蓮と水野悠真。

二人は海老楽大学の1年生でした。

蓮は陽太に憧れ、

悠真はリンに影響を受けて入部します。

しかし、二人には過去がありました。

高校時代。

地域で騒いだり、

商店街で迷惑をかけたり、

大人から注意されても軽く考えたりしていました。

悠真にはさらに、

高校時代にスカート姿のリンを遠くから見て馬鹿にした経験もありました。

ところが、海老楽テレビのBOY&BOYISHの動画を見るうちに、考えが変わります。

画面の中のリンは、

誰かに迷惑をかけている人ではありませんでした。

地域の人に声をかけ、

子どもと笑い、

高齢者を気遣い、

商店街の人から信頼されていました。

悠真は気づきます。

「変だったのはリン先輩じゃない。人を見た目だけで笑っていた自分のほうだった」

二人は自分たちの過去を告白し、

地域活動を通して少しずつ変わっていきました。


BOY&BOYISH 4

陽太。

リン。

蓮。

悠真。

四人になったユニットは、

BOY&BOYISH 4

へ発展します。

制服スタイルでは、

陽太と蓮がスラックス。

リンと悠真がプリーツスカート。

しかし後に、服装はそれだけに固定されません。

ストリートデニム。

ショートデニム。

スポーツウェア。

カジュアルウェア。

その日の活動に合った服を自由に選ぶようになります。


歌も地域でつくる

BOY&BOYISH 4には当初、オリジナル曲がありませんでした。

そこで海老楽大学と海老楽市役所が協力し、

代表曲の公募事業

が始まります。

市議会では賞金や制作費が予算化されました。

代表曲に選ばれたのは、

「この街で、ずっと。」

です。

さらに、選ばれなかった曲も単純に没にはしません。

盗用確認。

権利整理。

著作権登録。

イベントやアルバムでの活用。

収益分配。

音楽そのものを、

地域の共有資産

へ変えていきました。


スポーツと学校活動

四人はダンスだけでなく、身体能力も高いことが分かっていきます。

海老楽大学サッカー部との練習試合。

中学校バスケットボール部への月1回指導。

小学校のあいさつ運動。

子どもたちにとって、BOY&BOYISH 4は「テレビに出ている人」である前に、

地域で会える大学生

になりました。


学生の本分

一方で、地域活動部は学業を軽視しませんでした。

試験前は活動を縮小。

部室にはイベント資料だけでなく、

教科書。

参考書。

課題。

試験日程。

が並びます。

陽太。

リン。

蓮。

悠真。

彩花。

カイル。

全員が単位を取得し、全科目A評価。

活動だけでなく、

学業もきちんとやること

が部の信頼につながっていきました。


信頼を失いかけた出来事

順調な活動の中でも、問題は起きます。

悠真が高校時代の友人たちとラーメン店にいたとき、

友人たちが騒ぎ、

店から注意を受けました。

悠真自身は止めていましたが、同席者として責任を感じ、謝罪します。

その後、

騒いだ友人たち自身も地域活動部へ謝りに来ました。

彼らは商店街清掃へ参加し、

やがて自分たちも地域へ関わるようになります。

ここで地域活動部が学んだのは、

「信頼は壊れるのは一瞬。でも、行動でつくり直すことはできる」

ということでした。


大学全体の不祥事

海老楽大学の別の部で飲酒絡みの不祥事が発生したとき、

地域から大学全体を見る目が厳しくなりました。

地域活動部は、

BOY&BOYISH 4を前面に出して信頼を訴えるのではなく、

清掃。

スポーツ。

子どもとの交流。

高齢者との交流。

住民との対話。

音楽。

を通じて、

普段の行動を見てもらうイベント

を行いました。

その結果、地域からの不信感は大きく和らぎました。


地域福祉論へ

この頃になると、物語は単なる学生ユニットの話ではなくなっていました。

住民参加。

世代間交流。

地域ネットワーク。

社会資源。

エンパワメント。

地域アセスメント。

信頼関係形成。

地域共生社会。

BOY&BOYISH 4の活動そのものが、

地域福祉論の実践ケース

になっていきました。


衣裳から「海老楽ブランド」へ

彩花はある日言います。

「衣裳は、スカートにこだわる必要もないわね」

そして地元のアパレルメーカーやデザイナーと連携。

服装をもっと自由に、

もっと地域に根ざしたものへ変えていきます。

そこから誕生したのが、

EBIRAKU

海老楽ブランドでした。

子ども。

学生。

大人。

高齢者。

障害のある人。

誰でも着やすく、

明るく、

スタイリッシュ。

マグネット留め具。

大きなファスナー。

伸縮素材。

座った姿勢でも形が崩れにくい服。

機能性を「福祉用品らしく」見せるのではなく、

自然にデザインへ溶け込ませました。

服が、

地域産業と福祉をつなぐもの

になっていきます。


東高校新聞部からの新入部員

その後、

県立東高校新聞部出身の

竹本翔太

と

沢村加代

が海老楽大学へ進学し、地域活動部へ入部します。

翔太は元新聞部副部長。

穏やかで、記録や整理が得意。

加代は元新聞部部長。

システム手帳を使いこなし、

企画、取材、スケジュール管理に強い。

彩花とカイルは、

二人の能力の高さに驚きました。

翔太は細部を見る。

加代は全体を見る。

二人が加わったことで、

地域活動部の企画と記録の質は一段上がります。


東高校との継続交流

東高校新聞部からは、

山下慎一郎

川野忠

若野美佐子

が定期的に取材へ来るようになります。

大学と高校の間に、

記事と人の交流が生まれました。

特に山下慎一郎は、

リンのいじめの過去を知り、

自分自身も中学時代にいじめを経験したことを打ち明けます。

リンは何も急いで結論を出さず、

ただ静かに話を聞きました。

そして二人は、

先輩と取材者を越えて、

親友

になりました。


慎一郎の才能

慎一郎は取材体験として、

リンとスカート制服スタイルでランウェイとダンスを体験します。

そこで、

柔道経験による体幹。

スポーツへの高い適応力。

ダンスの覚えの速さ。

リズム感。

歌唱。

音感。

が次々に発見されます。

「取材する側」だった慎一郎が、

自分自身の新しい才能を知る物語にもなりました。


若葉良輔とX誹謗中傷事件

ある日。

リンに対するX上の誹謗中傷が突然始まりました。

中学時代のことまで知っているような悪質な投稿でした。

しかしリンは折れませんでした。

「知らない誰かの言葉より、俺は知ってる人を信じる」

東高校新聞部のITに強い若葉良輔が、

公開情報や文章の癖、投稿時間帯などを整理。

警察へつなぐ資料を作ります。

最終的に判明した相手は、

リンを中学時代にいじめていた、

海老楽大学の学生、

加藤直哉

でした。

加藤は逮捕され、

略式起訴。

罰金。

大学から1か月停学。

という処分を受けます。


加藤直哉の再出発

停学後。

加藤は地域活動部へ正式に謝罪に来ます。

リンは言いました。

「過去は消えない」

でも同時に、

「これから何をするかは見る」

とも言いました。

加藤はすぐには部員になれません。

まずは、

清掃。

設営。

撤収。

高齢者交流。

子どもとの活動。

目立たない仕事を何か月も続けました。

やがて正式入部。

さらに時間をかけ、

仲間から信頼を得ていきます。

これは、

更生保護と地域再統合

の物語になりました。


今度はリンが守る

しかし大学内には、

加藤の過去を理由に侮辱する学生もいました。

そのとき、

加藤を守ったのはリンでした。

「俺が一番、加藤に何をされたか知ってる」

「その上で、今の加藤を見てる」

「過去を理由に、今の人間まで侮辱していいわけじゃない」

この行動は、多くの海老楽大学生から支持されました。


教育学部・社会福祉学部の特別講義

やがて、

リンと加藤は、

教育学部

と

社会福祉学部

から特別講義へ招かれます。

教育学部では、

「いじめと関係修復」

社会福祉学部では、

「更生と地域再統合」

をテーマに講演。

リンは、

「被害者に許す義務はない」

加藤は、

「加害者に信頼が自動的に戻るわけではない」

と語ります。

二人の講義は好評となり、

年1回の恒例授業

になりました。


お好み焼きミーティング

竹本翔太は、

高校新聞部時代から続けていた

《お好み焼きミーティング》

を大学へ持ち込みました。

最初は地域活動部だけ。

やがて学部。

サークル。

地域住民。

へ拡大。

さらに翔太の行きつけの店だけではなく、

海老楽市内のお好み焼き店やたこ焼き店を巡回する形式になります。

そこで、

学生交流。

地域課題の話し合い。

店主への取材。

グルメ情報。

地域情報発信。

が一体化。

紹介された店の売上が上がるケースも生まれました。

地域活動部では、

この活動を

「食べる地域活動」

と呼ぶようになります。


そして、会社へ

ここまで来ると、

地域活動部の事業は、

もはや普通の学生サークルの規模ではありませんでした。

EBIRAKUブランド。

地域イベント。

商品開発。

広報制作。

グルメ情報。

地域企業との共同事業。

行政との連携。

学校との連携。

学長は、

山田カイルと田中彩花を学長室へ呼びました。

そして言います。

「この活動を、大学の中の会社として正式に認めたい」


海老楽大学地域デザイン株式会社

こうして、

海老楽大学地域デザイン株式会社

ブランド名、

EBIRAKU CONNECT

が誕生しました。

カイルは、

学生事業責任者・企画統括

彩花は、

運営・広報・地域連携責任者

を担います。

重要なのは、

地域活動部そのものを会社にしなかったことです。

地域活動部は、

人とつながる場所。

会社は、

そのつながりを形にする場所。

ボランティアと事業を分け、

利益は地域活動へ再投資。

学生は実際に、

経営。

福祉。

教育。

デザイン。

情報。

法律。

会計。

マーケティング。

を地域で使うようになりました。


会社の理念

カイルと彩花が決めた理念は、

「地域の困りごとを、地域の可能性に変える。」

そして、

「利益は地域へ、経験は学生へ。」

でした。


最初から会社を作ろうとしたわけではない

BOY&BOYISHは、

会社を作るために始まったわけではありません。

地域福祉を勉強するためでもありません。

学園祭。

二人の男子大学生。

スラックス。

プリーツスカート。

歌。

ダンス。

そこから始まりました。

でも、

人と出会うたびに、

活動が増えました。

活動が増えるたびに、

問題も起きました。

問題が起きるたびに、

考えました。

そして、

誰かと一緒に解決する方法

を選び続けました。


BOY&BOYISHが残したもの

BOY&BOYISH 4は、

単なる学生ユニットではなくなりました。

けれど、

原点は変わっていません。

陽太とリンが並ぶ。

違う服を着る。

違う動きをする。

それでも同じ舞台に立つ。

その発想が、

いつの間にか、

違う世代。
違う立場。
違う過去。
違う能力。

を持つ人たちが、

同じ地域で一緒に生きるという考えにつながっていました。


そして部室は変わらない

会社設立の日。

式典が終わり、

全員が地域活動部の部室へ戻ってきました。

悠真。

「会社できたのに、普通ですね」

リン。

「それでいいんじゃない?」

翔太。

「明日、お好み焼きミーティングありますよ」

カイル。

「設立祝い?」

翔太。

「普通のミーティングです」

彩花。

「それが一番いいわね」

陽太は笑いました。

机の上には、

次の地域イベントの資料。

EBIRAKUブランドの試作品。

高校新聞。

取材ノート。

大学の教科書。

そして、

お好み焼き店の予約票。


BOY&BOYISH

地域と歩む青春

学園祭の小さなユニットは、

地域活動部になり、

高校と大学をつなぎ、

学校と商店街をつなぎ、

福祉と産業をつなぎ、

過去に傷ついた人と、

過去に傷つけた人までつなぎ、

ついには、

大学と地域を結ぶ会社

を生みました。

けれど、

一番大切なものは、

最初から変わっていません。

人を見ること。
話を聞くこと。
信じること。
失敗したらやり直すこと。
そして、一緒に地域へ出ていくこと。

BOY&BOYISHの物語は、

「有名になる物語」ではありませんでした。

それは、

人と人がつながることで、街が少しずつ変わっていく物語

だったのでした。

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