【12号】陽太くんの物語 令和070330
「佐藤健一の物語:遠くの光と喫茶店の灯り」
第4章:試練の冬と遠い光(2027年~2028年)
2027年、青葉市の冬は雪に閉ざされてた。俺、佐藤健一は52歳で、市役所の机に向かってた。定年まであと数年。毎日が同じ書類仕事の繰り返しで、心が冷たく乾いてた。そんな時、地元紙に陽太の記事を見つけた。「星翔大学医学部6年、佐藤陽太が医師国家試験に挑戦」。25歳の陽太の写真が載ってて、切れ長の目が真剣に輝いてた。俺は新聞を手に震えて、「陽太、医者になるのか」と呟いた。
家に帰って、俺は手紙を書いた。「陽太へ、おめでとう。父ちゃんより」とペンを走らせた。陽太が試験に受かる姿を想像して、胸が熱くなった。でも、手紙を封筒に入れる前に、俺は止まった。陽太にこんな手紙、送る資格が俺にあるのか? 結局、手紙を机の引き出しにしまった。夜、アパートの窓から雪を見ながら、「陽太が医者か」と呟いたら、涙がこぼれた。俺は何もしてやれなかったけど、陽太は自分で未来を掴もうとしてる。その強さに、心が震えた。
2028年、陽太が25歳の冬。俺は53歳で、市役所の窓から吹雪を見下ろしてた。テレビで陽太のニュースが流れた。「星翔大学医学部の学生が国家試験を突破、研修医へ」。陽太が白衣を着て笑う姿が映ってて、俺は息を呑んだ。あの傷跡を背負った陽太が、医者になった。俺は立ち上がって、テレビに近づいた。「陽太、お前、やり遂げたんだな」と呟いて、涙が溢れた。陽太の笑顔が、俺の乾いた心に温かい風を吹き込んでくれた。
夜、俺はアパートでビールを手に持ったまま、ぼんやりしてた。陽太が医者として誰かを救う姿を想像したら、胸の奥が熱くなった。俺の人生は何だったんだろう。家族を失って、一人で生きてきて、何を残せたんだ? そう思って、目を閉じた時、陽太の小さな声が頭に響いた。「パパ、約束ね」。昔、肩車して約束した野球の記憶だ。俺は目を開けて、「陽太、俺も何か…」と呟いた。窓の外、吹雪が止んで、遠くの星が一つ輝いてた。あれが陽太なら、俺にも何かできるかもしれない。そんな気がした。
第4章の終わり
陽太の試練は遠くで終わり、医者としての光が輝き始めた。俺の人生は冬に閉ざされてたけど、陽太の笑顔がその雪を溶かしてくれた。俺は一人で生きてきたけど、陽太が未来を切り開く姿が、俺に小さな力をくれた。俺はまだ知らなかった。その遠い光が、俺を新しい一歩へと導くなんて。