【342号】陽太と悠斗の温泉旅行物語 令和070614
陽太と悠斗の温泉旅行物語
第7章:伊香保温泉の石段と心の絆(2030年春)エピソード7:伊香保温泉での誓いと笑顔
1. 春の伊香保、石段街の始まり
2030年3月、陽太と悠斗は群馬県の伊香保温泉にやってきた。草津、箱根、有馬、登別、別府、道後と続いた旅の7回目。春の伊香保は桜がほころび始め、石段街の両側に並ぶ旅館や土産物屋が温かい雰囲気を漂わせる。陽太は26歳、彩花と結婚し、研修医2年目として地域医療への情熱を深めている。悠斗は24歳、研修医2年目として医者とモデルの両立に励み、陽太の背中を追い続けている。
伊香保温泉の入口、石段街のふもとに立つ二人。陽太は白Tシャツにジーンズ、175cmの長身が春の陽光に映える。悠斗はチェックシャツとチノパン、170cmの丸顔に笑みがこぼれる。「陽太先輩、伊香保の石段、めっちゃ雰囲気あるっすね! 温泉も楽しみっす!」悠斗の声が弾む。
「そうだな。群馬は草津に続いて2回目だけど、伊香保のこの石段、なんか懐かしい感じがする。『地域医療を輝かせよう』って、こんな街で患者と向き合えたらいいな。」陽太の切れ長の目に、穏やかな光が宿る。腹部の手術傷跡を撫でながら、「『傷跡を宝物に』って、彩花と話してた夢が、こうやって旅してるともっとリアルになるよ。」
二人は365段の石段街を登りながら、桜の花びらが舞う風景に目を奪われる。温泉饅頭の甘い香りや、湯気の漂う路地に心が温まる。「陽太先輩、卓球やりたいっすね! 旅館で勝負っすよ!」悠斗が目を輝かせる。
2. 黄金の湯と地域医療の誓い
旅館にチェックインした二人は、白い浴衣に着替えて伊香保名物の黄金の湯へ。鉄分を含んだ黄褐色の湯は、体の芯まで温め、ほのかな鉄の香りが鼻をくすぐる。露天風呂に浸かると、春の風が桜の花びらを運び、湯船にそっと落ちる。
「うわっ、この湯、なんか力強いっすね! 体がポカポカする…。」悠斗が目を閉じ、湯をかき混ぜる。
陽太は湯船の縁に肘をつき、桜の木を見上げながら呟く。「最近、地域医療の実習でさ…患者さんとの絆が医者の宝だって実感した。青葉市の高齢者の方が『先生、ありがとう』って笑ってくれて…『地域医療を輝かせよう』って、彩花との約束、絶対叶えたい。」
悠斗は陽太の言葉に耳を傾け、湯の中で少し身を乗り出す。「陽太先輩…俺、研修医としてまだまだっすけど、先輩の話聞いてると、患者さんの心に寄り添うのが医者の仕事だなって思う。祖父ちゃんの『医者は人の心を救う仕事』って言葉、伊香保の湯でまた実感したっす。陽太先輩みたいに、俺もそんな医者になりたい。」
陽太は微笑み、悠斗の肩をポンと叩く。「お前、ちゃんと寄り添ってるよ。患者さんの笑顔、お前も見てるだろ? 『陽太先輩みたいに』なんて言わなくていい。お前の純粋さ、患者さんに届いてるさ。」
黄金の湯の温もりに包まれながら、二人の会話は地域医療への情熱と絆で満たされた。桜の花びらが湯に浮かぶ中、未来への誓いが静かに響く。
3. 石段街の散策と青春のひととき
昼下がり、二人は石段街を散策する。石段の両側には老舗の旅館や射的屋が並び、温泉街の賑わいが春の空気に溶け合う。陽太は温泉饅頭を手に、「彩花、こういう素朴な甘いもの好きなんだよな。結婚したばっかりだけど、いつか一緒に来たいな。」と笑う。
悠斗は射的で木製のキーホルダーをゲットし、「陽太先輩、彩花さんにプレゼントっすよ! 俺、こういう街で患者さんと話す医者、めっちゃ憧れるっす。陽太先輩みたいに、患者さんの心に寄り添いたい。」
陽太は照れ笑いを浮かべ、「お前、いつも『陽太先輩みたいに』って言うけど、俺だって悠斗のエネルギーにもらってるんだぜ。地域医療、青葉市で一緒に輝かせようぜ。」二人は石段を登り切り、伊香保神社で桜を見ながら写真を撮り合う。陽太の穏やかな笑顔と、悠斗のキラキラした目が、春の桜に映える。
4. 伊香保の味と夜の卓球対決
夜、旅館の夕食は上州牛のしゃぶしゃぶ。薄切りの牛肉を熱々の出汁にくぐらせ、ゴマダレの香ばしい香りが食欲をそそる。陽太は箸を動かしながら、「母ちゃんが『陽太ならやれるよ』って言ってたの、こういう田舎の味で思い出すな。青葉市でクリニック開く時、こんな味を患者さんと分かち合えたらいいな。」
悠斗はしゃぶしゃぶを頬張りながら、「陽太先輩、俺も祖父ちゃんが患者さんと地元の料理食べてた話、子供の頃聞いてたっす。『医者は人の心を救う仕事』って、こういう時間で実感するっす。」
食後、二人は旅館のロビーで卓球対決に突入。陽太の鋭いスマッシュに、悠斗が「先輩、ずるいっすよ!」と笑いながら返す。浴衣の裾がはだけ、汗が額に光るが、二人とも子供のようにはしゃぐ。ピンポン玉の軽い音と笑い声が、研修医の重圧を吹き飛ばす。
「陽太先輩、次は黒川温泉っすね! 熊本の露天風呂、めっちゃ楽しみっす!」悠斗がラケットを手に提案する。
「いいな。彩花にも話して、『一緒に頑張ろうね』って気持ち、もっと強くしようぜ。」陽太の笑顔は、傷跡を越えた自信に満ちていた。
伊香保の黄金の湯と石段街は、陽太に地域医療の夢を、悠斗に患者への寄り添いを再確認させ、次の旅への力を与えた。