【1325号】BOY&BOYISH 4 海老楽大学地域活動部 「地域活動を、大学の中の会社にする」 令和080923
海老楽大学地域活動部
「地域活動を、大学の中の会社にする」
地域活動部の活動は、もう「学生サークル」の一言では収まらなくなっていました。
BOY&BOYISH 4の地域イベント。
EBIRAKUブランド。
商店街清掃。
学校との連携。
高齢者交流。
地域新聞。
お好み焼きミーティング。
大学と地域をつなぐ企画は、毎月のように増えていました。
その中心で動いていたのが、
山田カイルと田中彩花。
カイルは企画とプロデュース。
彩花は広報、記録、調整、対外連携。
二人はいつの間にか、学生の範囲を越えるほど大きな仕事を回していました。
学長から呼び出し
ある日の午後。
地域活動部に大学本部から連絡が届きます。
「山田カイルさん、田中彩花さん。学長室へ来てください」
悠真。
「何かやらかしました?」
彩花。
「なんで最初にそれを疑うの」
カイル。
「俺は何もしてない」
加代。
「その言い方が一番不安です」
二人は少し緊張しながら学長室へ向かいました。
学長室
学長は、地域活動部の年間活動報告書を机に置いていました。
分厚い冊子です。
活動件数。
参加学生。
地域団体。
行政との連携。
学校との連携。
商店街との協働。
EBIRAKUブランド。
飲食店巡回企画。
地域への経済効果。
学外メディアでの紹介。
学長はページをめくりながら言いました。
「これは、もう学生サークルの活動量ではないですね」
カイル。
「すみません」
学長。
「褒めています」
カイル。
「よかった」
彩花が小さくため息をつきました。
「大学として、形にしたい」
学長は続けます。
「海老楽大学は、地域との連携を教育の一部として位置づけています」
「しかし君たちの活動は、その枠をかなり先へ進んでいる」
彩花。
「先へ?」
「教育、福祉、地域経済、広報、商品開発、イベント運営」
「複数の分野が一つの活動に結びついています」
そして学長は一枚の資料を二人へ渡しました。
そこには、
海老楽大学 学内株式会社制度
と書かれていました。
「会社?」
彩花。
「会社……ですか?」
カイル。
「学生が?」
学長。
「大学内で、学生主体の事業体として運営する制度です」
一般企業とは少し違います。
大学の監督下で、
学生が実際に企画し、
予算を管理し、
地域企業や行政と契約し、
商品やイベントを運営する。
利益が出れば、
次の地域活動や学生プロジェクトへ再投資する。
つまり、
実践教育と地域貢献を兼ねた学内企業
でした。
学長の提案
学長は言いました。
「地域活動部の事業部分を、学内株式会社として独立させてはどうでしょう」
彩花。
「部活動そのものを会社にするんですか?」
「いいえ」
学長は首を振ります。
「地域活動部は残します」
学生のボランティア活動。
学校交流。
地域福祉活動。
それらは今まで通り。
ただし、
EBIRAKUブランド。
地域イベントの受託。
地域商品の企画。
グルメ情報。
広報制作。
地域企業との共同事業。
こうした事業性のある活動を、会社側へ分けるのです。
カイル、急に真顔
カイルは資料を読み込みました。
「これ、かなり本格的ですね」
学長。
「だから君たちに任せたい」
彩花。
「私たち?」
「企画責任者に山田さん」
「運営・広報責任者に田中さん」
カイル。
「学生ですよ?」
学長。
「だからです」
会社名会議
その日の夕方。
地域活動部では緊急会議が開かれました。
ホワイトボードには、
学内株式会社
の文字。
リン。
「すごいことになったね」
陽太。
「また話大きくなったな」
翔太。
「でも、今までやってたことを整理する意味では合理的ですね」
加代。
「会計も契約も、今のままでは複雑になりすぎてました」
蓮。
「会社名どうするんですか?」
全員がカイルを見ます。
カイル。
「俺?」
彩花。
「命名好きでしょ」
候補
カイルが候補を書きます。
EBIRAKU COMMUNITY
EBIRAKU LOCAL DESIGN
海老楽地域デザイン株式会社
EBIRAKU CONNECT
悠真。
「最後、普通に強そう」
リン。
「でも地域活動っぽいね」
翔太。
「分かりやすさなら日本語名も必要ですね」
彩花。
「正式名称とブランド名分けましょう」
最終的に決まったのは、
海老楽大学地域デザイン株式会社
ブランド名、
EBIRAKU CONNECT
でした。
学内株式会社、正式認可
数週間後。
大学評議会。
法務確認。
会計制度。
学生参加規程。
教員監督体制。
外部企業との契約ルール。
すべての審査を通過しました。
そして学長から正式に、
海老楽大学地域デザイン株式会社
の設立が認可されました。
社長ではなく
カイル。
「俺、社長?」
彩花。
「調子に乗らない」
学長。
「学生代表取締役という呼び方は使えますが、大学内制度上は『学生事業責任者』です」
カイル。
「急に現実的」
彩花。
「その方が安心」
役割は、
山田カイル
学生事業責任者・企画統括
田中彩花
運営・広報・地域連携責任者
となりました。
地域活動部との関係
ここで大事なルールが作られました。
地域活動部への参加と、会社の事業参加は別。
ボランティアだけしたい学生。
地域福祉活動をしたい学生。
商品開発をしたい学生。
デザインをしたい学生。
経営を学びたい学生。
それぞれが自分に合った形で参加できるようにしました。
リン。
「活動部が会社の下になるわけじゃないんだ」
彩花。
「逆。会社は活動を支える側」
加藤。
「利益が出たら?」
カイル。
「地域活動へ戻す」
最初の事業
最初の正式事業は、
EBIRAKUブランドの新シリーズ
でした。
地元アパレルメーカー。
デザイナー。
高齢者。
子育て世代。
大学生。
障害のある利用者。
それぞれから意見を聞き、
着やすく、
明るく、
スタイリッシュな服を作る。
会社として正式契約を結びました。
次はグルメ
竹本翔太の《お好み焼きミーティング》も、
会社側の地域情報事業として一部連携することになりました。
翔太。
「これ、会社の仕事になるんですか?」
彩花。
「店から広告料は取らない」
カイル。
「でも地域情報として取材、分析、発信は事業になる」
加代。
「売上変化もデータとして残せますね」
翔太。
「新聞部でお好み焼き食べてた頃には想像してなかったです」
学生の会社
学生たちは、授業で学んだことを実際に使いました。
経営学。
福祉。
教育。
デザイン。
情報。
広報。
法律。
会計。
マーケティング。
地域政策。
学長は言いました。
「教室で学んだことが地域で動く」
「それが、この会社の意味です」
彩花の心配
ある夜。
会社設立準備が終わり、
彩花とカイルは部室に残っていました。
彩花。
「会社になったら、数字を追いかけすぎないようにしないとね」
カイル。
「売上?」
「うん」
「地域活動が、儲かるか儲からないかだけで判断されるようになったら終わり」
カイルはうなずきます。
「利益は目的じゃない」
彩花。
「何のため?」
カイル。
「続けるため」
彩花は笑いました。
「正解」
会社の理念
二人は会社理念を考えました。
何度も書き直し、
最後に残ったのは、
「地域の困りごとを、地域の可能性に変える。」
そしてもう一つ。
「利益は地域へ、経験は学生へ。」
学長は、その文章を見て言いました。
「いいですね」
開所式
会社のオフィスは、
大学キャンパス内の小さな部屋から始まりました。
看板には、
海老楽大学地域デザイン株式会社
EBIRAKU CONNECT
地域の商店主。
アパレルメーカー。
学校関係者。
市役所職員。
大学教員。
学生。
多くの人が集まりました。
BOY&BOYISH 4も
開所式のステージには、
陽太。
リン。
蓮。
悠真。
四人が立ちました。
リン。
「俺たち、会社員になるの?」
彩花。
「ならない」
悠真。
「残念」
陽太。
「何を期待してたんだ」
会場が笑います。
カイルの挨拶
カイルがマイクを持ちました。
「これは、学生が会社ごっこをする場所ではありません」
会場が静かになります。
「地域の人と一緒に、本当に困っていることを考えて、本当に形にする場所です」
「失敗もすると思います」
「でも、その失敗も大学で学ぶものにしたい」
彩花の挨拶
続いて彩花。
「地域活動部は、これまでたくさんの人に支えてもらいました」
「今度は、その支えを仕組みにして返していきたいと思います」
「会社になっても、私たちの原点は変わりません」
そして、
「顔の見える関係を大切にします」
学長の言葉
最後に学長。
「大学は、知識を学ぶ場所です」
「しかし、知識を地域で使う場所でもあります」
「海老楽大学地域デザイン株式会社は、その橋になります」
部室へ戻って
式が終わったあと。
全員がいつもの部室へ戻りました。
会社ができても、
部室は変わりません。
机。
ホワイトボード。
カメラ。
活動記録。
お菓子。
悠真。
「会社できたのに、普通ですね」
リン。
「それがいいんじゃない?」
翔太。
「明日、お好み焼きミーティングありますよ」
カイル。
「会社設立祝い?」
翔太。
「普通のミーティングです」
彩花。
「それでいいわね」
小さな会社、大きな街
こうして、
海老楽大学地域活動部から生まれた活動は、大学内株式会社という新しい形を持ちました。
地域活動部は、
人とつながる場所。
会社は、
そのつながりを形にする場所。
役割は違います。
でも目的は同じでした。
地域と大学が、一緒に未来をつくること。
カイルと彩花が学長から託されたのは、
会社そのものではありません。
これまで積み重ねてきた信頼を、次の世代でも続けられる仕組みにすること。
海老楽大学の小さな学内企業は、
地域活動部の隣の部屋から、
静かに動き始めました。

