【1310号】BOY&BOYISH 4 「新聞部から、地域活動部へ」 令和080922
BOY&BOYISH 4
「新聞部から、地域活動部へ」
春。
海老楽大学のキャンパスには、新入生を迎える立て看板とサークル勧誘の声があふれていました。
地域活動部のブースでも、彩花が新入生向けの写真パネルを並べています。
商店街清掃。
小学校のあいさつ運動。
中学校のスポーツ交流。
高齢者とのイベント。
EBIRAKUブランド。
そしてBOY&BOYISH 4。
悠真がチラシを配りながら言いました。
「今年、何人入ってくれますかね」
蓮。
「人数より、続けてくれる人が来ればいいよ」
リン。
「それ、先輩っぽくなったね」
「もう俺たちも先輩ですから」
そんな会話をしていると、
ブースの前で二人の新入生が立ち止まりました。
一人は眼鏡をかけた穏やかな男子学生。
もう一人は、手帳を手にした女性でした。
女性がパネルをじっと見ています。
そして、
「これ、全部学生が企画してるんですか?」
と尋ねました。
彩花が答えます。
「大学だけじゃなくて、地域の人と一緒にね」
女性はすぐに手帳を開きました。
「なるほど」
隣の男子が苦笑します。
「加代、まだ入部してないのに取材みたいになってるよ」
彩花。
「加代?」
女性は顔を上げました。
「沢村加代です。県立東高校から来ました」
男子も頭を下げます。
「竹本翔太です。同じく東高校です」
元新聞部
二人が東高校で新聞部だったと聞いた瞬間、
彩花の目が変わりました。
「新聞部?」
加代。
「はい。私が部長、竹本君が副部長でした」
カイルが横から入ってきます。
「それは面白い人材が来たな」
翔太。
「まだ入るって決めてないですよ」
加代。
「私はかなり入るつもりだけど」
翔太。
「もう決めてるじゃないか」
地域活動部に笑いが起きました。
「地域活動を取材する側だった」
話を聞いてみると、二人は高校時代から地域の行事や学校活動を取材していました。
加代は言います。
「高校の新聞部では、地域の活動を外から見ることが多かったんです」
祭り。
スポーツ大会。
地域交流。
学校行事。
それを記事にして残してきました。
翔太も続けます。
「でも大学では、取材するだけじゃなくて、自分たちも中に入ってみたいと思って」
陽太。
「見る側から、やる側へ?」
「はい」
彩花と加代
彩花は加代の持っていたシステム手帳を見て笑いました。
「すごいね、それ」
中には、
大学の授業予定。
サークル説明会。
地域イベント。
アルバイト候補。
入学直後とは思えないほど予定が整理されていました。
加代。
「書かないと忘れるので」
彩花。
「私と相性よさそう」
カイル。
「広報班が強くなりすぎる」
彩花。
「あなたの無茶な予定を止める人が増えるのよ」
「それは困る」
翔太の役割
一方、翔太は壁に貼られた地域活動部のブログ記事を読んでいました。
文章だけではありません。
写真。
活動記録。
住民のコメント。
イベント後の反省点。
翔太は言います。
「これ、新聞部にかなり近いですね」
蓮。
「そうなんですか?」
「取材対象が地域全体になった感じです」
翔太は、高校時代に培った記事整理の経験を使って、
「活動ごとに記録様式を統一したら、あとで振り返りやすいですよ」
と提案しました。
彩花。
「採用」
翔太。
「早いですね」
「こういうのは早いほうがいいの」
加代。
「彩花先輩、私と考え方似てますね」
カイル。
「嫌な予感がする」
BOY&BOYISH 4との出会い
二人ともBOY&BOYISH 4の存在は知っていました。
地元テレビ。
商店街。
SNS。
大学の地域活動紹介。
しかし翔太は言いました。
「正直、最初は芸能系の大学サークルだと思ってました」
悠真。
「よく言われます」
リン。
「俺たち、歌って踊ってるからね」
加代。
「でも調べると、やってることが全然違う」
彼女の手帳にはすでに、
小学校あいさつ運動
中学校スポーツ交流
商店街清掃
高齢者交流
地域ブランド
と書かれていました。
陽太。
「もうそこまで調べたんだ」
加代。
「新聞部なので」
翔太。
「もう卒業してるけどね」
入部届
説明を一通り聞いたあと。
加代は迷いなく入部届を取りました。
名前を書きます。
沢村加代
そして翔太を見る。
「竹本君は?」
翔太は少し考えました。
「俺も入るよ」
竹本翔太
二枚の入部届が、彩花へ渡されました。
新しい地域活動部
その日の夕方。
地域活動部のホワイトボードに、新しい名前が加わりました。
BOY&BOYISH 4
佐藤陽太
林 明(リン)
高橋蓮
水野悠真
企画・広報
田中彩花
山田カイル
新入部員
沢村加代
竹本翔太
リンがホワイトボードを見ながら言いました。
「また増えましたね」
陽太。
「しかも今回は取材のプロ経験者」
加代。
「プロじゃありません。元高校新聞部です」
悠真。
「でも取材される側としては怖いなあ」
加代は笑います。
「悪いことしなければ大丈夫ですよ」
悠真。
「一番怖いタイプだ」
最初の仕事
加代と翔太に与えられた最初の活動は、
EBIRAKUブランドの商店街イベント取材
でした。
ただし今回は、記事を書くだけではありません。
午前中は会場設営。
昼は来場者案内。
午後から取材。
終了後は撤収。
加代。
「新聞部なら取材だけで終わってたわね」
翔太。
「ここでは机も運ぶんだな」
陽太が笑います。
「地域活動部へようこそ」
取材する側、される側
イベントで加代は高齢者へ尋ねました。
「この服を着てみて、どうでしたか?」
女性は答えます。
「明るい色を着たら、外に出たくなったよ」
翔太はその言葉をメモしました。
別の場所では子どもが、
「ポケットいっぱいある!」
と新しいジャケットを見せています。
加代はシャッターを切りながら気づきます。
高校時代の新聞取材とは、何かが違う。
自分たちは取材者である前に、
このイベントを一緒につくった一員
なのです。
「記事の向こう側」
活動終了後。
翔太が言いました。
「高校の新聞部では、出来事が起きてから取材に行ってた」
加代。
「うん」
翔太。
「でもここは、出来事を一緒につくって、それを記録するんだな」
彩花がその言葉を聞いていました。
「それが地域活動部の記録なのかもしれないね」
何かを宣伝するだけではない。
成功したことだけを書くのでもない。
地域で起きたこと。
失敗したこと。
改善したこと。
誰かが笑ったこと。
誰かが困ったこと。
それを残して、次の活動へ渡す。
新しい力
こうして海老楽大学地域活動部には、
「地域を取材する視点」
を持つ二人が加わりました。
沢村加代。
竹本翔太。
県立東高校新聞部で培った、
観察する力。
聞く力。
文章にする力。
記録する力。
その力は、BOY&BOYISH 4の地域活動と組み合わされていきます。
そして彩花は、早くも次の企画を考えていました。
「海老楽地域新聞」
商店街。
学校。
大学。
子ども。
高齢者。
地元企業。
地域活動部。
それぞれの活動を学生自身が取材し、定期的に発信する地域新聞です。
カイルが言います。
「また話が大きくなってない?」
彩花。
「いつものことでしょ」
翔太は笑い、
加代はすでにシステム手帳へ、
『地域新聞・創刊準備』
と書き込んでいました。
海老楽大学地域活動部は、
歌う、踊る、活動するだけの部から、
地域の出来事を記録し、次の世代へ伝える部へ。
また一つ、新しい役割を持ち始めました。
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