【1365号】BOY&BOYISH 5 外伝 「父が見た、息子のステージ」 令和080930

 


BOY&BOYISH 5 外伝

「父が見た、息子のステージ」

XSparkのホームゲーム。

満員のスタジアム。

ハーフタイムにピッチへ登場したBOY&BOYISH 5の中に、竹本翔太の姿がありました。

ネイビーを基調としたステージ衣裳。

そして翔太が選んだのは、リンや悠真と同じ流れをくむプリーツスカートスタイルでした。

客席の一角。

その姿を、じっと見つめている男性がいました。

翔太の父。

海老楽市で個人会社、

竹本商店

を経営している父親でした。


「本当にスカートで出るのか」

翔太がBOY&BOYISH 5へ正式加入すると家で話したとき、父は少し複雑そうな表情をしました。

「ダンスをやるのはいい」

「脚本も地域活動も、お前がやりたいならやればいい」

ただ、

「でも……スカートで出るのか?」

そこだけは引っかかっていました。

翔太。

「はい」

父。

「男が?」

「そうです」

翔太は無理に説得しようとはしませんでした。

「見てもらった方が早いと思います」

父。

「何を?」

「実際に踊ってるところ」

それ以上、翔太は説明しませんでした。


父は半信半疑のままスタジアムへ

そしてXSparkのホームゲーム。

父は取引先からもらったチケットではなく、自分で席を取ってスタジアムへ来ました。

「一度くらい見ておくか」

そんな気持ちでした。

試合前。

スタジアム周辺には、

子ども。

学生。

高齢者。

XSparkサポーター。

海老楽大学の学生。

BOY&BOYISH 5を目当てに来た人。

さまざまな人がいました。

父は少し驚きます。

「翔太たち、こんなに知られてるのか」


ハーフタイム

前半終了。

照明。

大型ビジョン。

そして場内アナウンス。

「海老楽大学地域活動部、BOY&BOYISH 5!」

大歓声。

五人がピッチへ出ます。

陽太。

蓮。

リン。

悠真。

そして、

翔太。


父の目が変わる

父が最初に見たのは、もちろん翔太の衣裳でした。

プリーツスカート。

父。

「……本当に履いてる」

しかし、

それを気にしていたのは最初の数秒だけでした。

音楽が始まります。

翔太が走る。

止まる。

ターン。

リンと位置を入れ替える。

悠真と交差する。

陽太と蓮が後方から全体を支える。

翔太は笑っていました。

取材ノートを持っているときとは違う。

脚本を書いているときとも違う。

父が今まで見たことのない、

舞台の上の翔太

でした。


「似合ってるじゃないか」

隣に座っていたXSparkサポーターが言いました。

「竹本君、うまいなあ」

別の観客。

「最初は脚本書いてた子でしょう?」

「そうそう」

「踊れるんだな」

「衣裳もかっこいいじゃん」

父は黙って聞いていました。

誰も、

「男なのに」

とは言いません。

見ているのは、

動き。

表情。

5人の一体感。

そして楽しそうな翔太。

父は、ふっと笑いました。

「……似合ってるじゃないか」

自分でも少し意外な言葉でした。


応援をつなぐ五人

ショーの終盤。

翔太がマイクを取ります。

「後半、一緒にXSparkを送り出しましょう!」

観客席。

大歓声。

5人が選手入場口を指します。

XSparkの選手がピッチへ戻る。

スタジアム全体が手拍子。

父は、その光景を見ていました。

息子が目立とうとしているわけではありません。

むしろ、

自分の出番を使って、次の主役へ観客の視線を渡している。

父には、それがいちばん翔太らしく見えました。


試合後

XSpark勝利。

スタジアムを出る人々の中で、

「今日よかったね」

「BOY&BOYISH 5また来てほしい」

「翔太君、ダンス意外だった」

という声が聞こえてきます。

父は少しだけ胸を張って歩きました。


家へ帰って

その夜。

翔太が帰宅すると、父が居間にいました。

翔太。

「見に来てたんですね」

父。

「気づいたか」

「スタッフ席からちょっとだけ」

少し沈黙。

父。

「悪かったな」

翔太。

「何が?」

「スカートだからどうこうって、先に考えてたこと」

翔太は少し驚きました。

父。

「実際見たら、そんなことどうでもよかった」

そして笑います。

「お前、ちゃんと踊れるんだな」

翔太。

「そこですか?」

父。

「そこもだ」


父が理解したもの

父は言いました。

「服だけ見てたら分からなかった」

「あれは衣裳なんだな」

翔太。

「そうですね」

「しかもお前が自分で選んで着てる」

「はい」

父。

「ならいい」

少し間を置いて、

「似合ってたぞ」

翔太。

「……ありがとうございます」

照れくさくて、それ以上は言えませんでした。


竹本商店での話

数日後。

竹本商店の社内会議。

小さな会社です。

社員同士の距離も近い。

父は言いました。

「地域への協賛を増やしたい」

社員。

「どこへです?」

父。

「海老楽大学」

「それと地域活動部」

社員が少し驚きます。

さらに、

「XSparkにも」

「サッカーですか?」

父。

「サッカーもバスケも」

会議室がざわつきました。


なぜスポンサーになるのか

社員の一人が聞きます。

「社長、急ですね」

父は少し考えてから答えました。

「急じゃない」

「前から地域に金を使うなら、広告を出すだけじゃ面白くないと思ってた」

そして、

「この前、翔太たち見て分かった」

大学。

学生。

プロスポーツ。

商店街。

地域住民。

全部が別々に存在しているのではなく、

つながることで人が動く。

試合に来る。

店へ行く。

イベントへ参加する。

学生が地域を知る。

地域が学生を知る。

父。

「ああいう循環に、うちも入っていいと思った」


竹本商店、スポンサーへ

こうして竹本商店は正式に、

海老楽大学

海老楽大学地域活動部

そして、

XSparkサッカーチーム

XSparkバスケットボールチーム

へのスポンサー協賛を決定しました。

大企業のような巨額契約ではありません。

しかし、

海老楽市で長く商売を続ける地元企業としての協力でした。


地域活動部へ父が来る

数日後。

父が海老楽大学地域活動部を訪れました。

彩花。

「竹本さんのお父さま?」

翔太。

「はい」

カイル。

「スポンサーの件、ありがとうございます」

父。

「こちらこそ」

リンも挨拶します。

「こんにちは」

父はリンを見ました。

以前なら、

「この子がスカートの……」

と考えていたかもしれません。

でも今は違いました。

「翔太がお世話になってます」

リン。

「こちらこそ、翔太君にはかなり助けられてます」

父。

「脚本ですか?」

リン。

「ダンスもです」

翔太。

「そっち強調しなくていいです」

部室に笑いが起きました。


リンへの一言

帰る前。

父はリンに声をかけました。

「実はね」

リン。

「はい?」

「最初、翔太がスカートで踊るって聞いたとき、正直ちょっと抵抗があったんです」

リンは黙って聞きました。

父。

「でもスタジアムで見たら、考えが変わりました」

そして、

「似合うとか似合わない以前に、本人が堂々としてるのが一番いい」

リンは笑いました。

「俺もそう思います」


翔太は少し離れて聞いていた

翔太は少し離れたところから、その会話を聞いていました。

彩花。

「嬉しい?」

翔太。

「まあ」

「素直じゃない」

翔太。

「かなり嬉しいです」

彩花。

「それでよろしい」


XSparkでも

スポンサー契約発表の日。

XSpark側も歓迎しました。

サッカークラブ担当者。

「海老楽の企業さんが支えてくれるのは、本当にありがたいです」

バスケットボール側も同様。

竹本商店のロゴが、

ホームゲームの地域スポンサー紹介に加わりました。

父はその看板を見て言います。

「翔太がきっかけになるとは思わなかったな」


竹本商店の広告

竹本商店が出した地域広告は、意外に控えめでした。

商品の宣伝を大きく載せるのではなく、

中央に一言。

「この街で挑戦する人を、応援します。」

その下に、

竹本商店

そして小さく、

海老楽大学。

海老楽大学地域活動部。

XSpark Football。

XSpark Basketball。

の協賛表示。


翔太の感想

翔太は広告を見て父へ聞きました。

「これ、父さんが考えたの?」

「そうだ」

「結構いいですね」

父。

「脚本家に褒められた」

翔太。

「そこまででは」

父。

「厳しいな」


親子の距離

父がすべてを理解したわけではありません。

翔太の活動も、

衣裳も、

AIを使ったダンスも、

父にとって知らないことはまだたくさんあります。

でも、

分からないから否定する

という場所から、

まず見てみる

という場所へ移りました。

それで十分でした。


そして次のホームゲーム

次のXSparkホームゲーム。

スタジアム。

スポンサー紹介。

大型ビジョンに、

「竹本商店」

の文字。

その下を、

BOY&BOYISH 5の翔太が走っていきます。

客席にいた父が手を振りました。

翔太も気づきます。

ほんの一瞬だけ、

父へ手を振り返します。

リン。

「今、お父さん?」

翔太。

「はい」

「嬉しそうだね」

翔太。

「僕もです」


BOY&BOYISH 5のステージは、

一人の父親の考え方まで少し変えました。

そしてその変化は、

家族だけで終わらず、

竹本商店から大学へ。
大学から地域へ。
地域からXSparkへ。

新しい支援の輪になって広がっていきました。

翔太がスカートで踊ったことそのものが重要だったのではありません。

父が最後に理解したのは、

もっと単純なことでした。

「息子が自分で選んだ場所で、楽しそうに頑張っている。」

それを見届けた日から、

竹本商店は、

息子だけではなく、

海老楽の挑戦そのものを応援する会社

になったのでした。

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