【71号】桜木遙ドラマ 純粋な夢と絆の光 令和070413 

 


悠斗くんの青春ドラマ:純粋な夢と絆の光
第1話:緑川町の夢と祖父の教え
文:桜木遥
シーン1:緑川町の夕暮れ
2019年、秋。架空の地方都市・緑川町の田園風景が広がる。夕陽が黄金色に水田を染め、遠くの山々が柔らかな紫に霞む。16歳の藤田悠斗(高校1年)は、自転車をこいで家路を急ぐ。丸顔に少し垂れ目の純粋な瞳、軽いウェーブの黒髪が風に揺れる。
「遅くなっちゃった…母ちゃん、怒るかな」
悠斗は小さく呟きながら、ペダルを踏む。カバンの中には、図書室で借りた医学書。表紙には「人体の不思議」と書かれ、ページの角は擦り切れている。
家に着くと、木造の古い一軒家から明かりが漏れる。玄関で靴を脱ぐと、母・恵美(40歳)の声が聞こえてくる。
「悠斗、遅いじゃない!ご飯冷めちゃうよ!」
「ご、ごめん、母ちゃん!図書室で…」
恵美はエプロン姿で台所に立ち、シチューの匂いが家中に漂う。彼女の笑顔には、どこか疲れた優しさがにじむ。
「また本?ほんと、勉強熱心ね。さ、早く手を洗って!」
悠斗は照れ笑いしながら、ダイニングのテーブルに座る。恵美が皿にシチューをよそい、隣に座る。テレビでは地元のニュースが流れ、緑川町の秋祭りの話題だ。
「母ちゃん、今年の祭り、行く?」
「んー、忙しいからねえ。でも、悠斗が行きたいなら一緒に行くよ」
二人は笑い合い、温かな時間が流れる。だが、悠斗の心には、どこか言い出せない思いがある。
シーン2:祖父の遺品と涙
食事が終わり、悠斗は自分の部屋へ。狭い部屋には勉強机と祖父・藤田明夫の写真が飾られている。明夫は70歳で亡くなり、悠斗が10歳の時だった。白衣姿の祖父は穏やかに微笑み、悠斗はその写真を見るたびに胸が熱くなる。
「祖父ちゃん…」
悠斗は机の引き出しを開け、埃をかぶった古いノートを取り出す。表紙には「医療日誌」とあり、祖父の達筆な字が並ぶ。ページをめくると、患者への思いや地域医療の記録が綴られている。
「今日、佐藤さんのおばあちゃんが『先生、ありがとう』って笑ってくれた。医者って、人の心を救う仕事だな…」
悠斗の指がその一文で止まる。祖父の声が、まるで耳元で響くようだ。
「医者は人の心を救う仕事…」
悠斗の瞳に涙がにじむ。祖父は緑川町でただ一人の医者として、貧しい人にも分け隔てなく接した。幼い悠斗に「悠斗、困ってる人を助けるんだぞ」と笑い、頭を撫でてくれたあの日の記憶がよみがえる。
「祖父ちゃん、俺…医者になりたいよ」
涙がぽろりとノートに落ち、インクを滲ませる。悠斗はノートを抱きしめ、静かに泣く。部屋の外では、恵美が洗い物をしながら鼻歌を歌っている。その音が、悠斗の心をそっと包む。
シーン3:母との約束
翌朝、朝食のテーブル。恵美が焼いたトーストと目玉焼きを前に、悠斗は少し緊張した顔で切り出す。
「母ちゃん、俺、決めたんだ」
「ん?何?また本借りすぎた?」
恵美が笑うが、悠斗の真剣な目に気づき、スプーンを置く。
「俺、医者になる。祖父ちゃんみたいに、人の心を救う医者に」
恵美の目が一瞬揺れる。彼女は夫を早くに亡くし、女手一つで悠斗を育ててきた。祖父・明夫の医者としての苦労も見てきたからだ。だが、悠斗の純粋な瞳を見て、彼女の顔に笑みが戻る。
「悠斗…そうなんだね。祖父ちゃん、きっと喜ぶよ」
「母ちゃん、いい?俺、医者になるよ!」
悠斗の声が弾む。恵美は立ち上がり、悠斗の頭をぎゅっと抱きしめる。
「いいよ、悠斗。母ちゃん、応援するから。どんな時もそばにいるよ」
悠斗の目から涙がこぼれ、恵美の肩に顔を埋める。
「ありがとう、母ちゃん…絶対、医者になるから」
朝陽が窓から差し込み、二人を温かく照らす。テーブルの上には、祖父の写真が静かに微笑んでいるようだ。
シーン4:緑川町の秋祭り
週末、緑川町の秋祭り。提灯が揺れ、太鼓の音が響く。悠斗と恵美は浴衣姿で屋台を歩く。綿菓子の甘い香りが漂い、子供たちの笑い声が聞こえる。
「母ちゃん、焼きそば食べる?」
「うん、でも悠斗、ちゃんと勉強もね!」
「はーい、母ちゃん!」
二人は笑い合い、焼きそばを分け合う。ふと、悠斗が空を見上げる。満天の星が輝き、祖父の笑顔が浮かぶようだ。
「祖父ちゃん、見てて。俺、医者になるよ」
悠斗は小さく呟き、恵美の手を握る。恵美が「悠斗、かっこいいね」と笑うと、悠斗は照れて「もう、母ちゃん!」と返す。
祭りの花火が夜空に咲き、悠斗の心に新たな夢の光が灯る。緑川町の風が、彼の背中をそっと押す。
エンディング
悠斗は祖父のノートを手に、机で医学書を開く。ページをめくる音が部屋に響き、窓の外では秋の虫の声。
「医者になる。人の心を救う医者に…」
悠斗の瞳には、純粋な決意が宿る。遠くで、恵美が「悠斗、明日の朝ごはん何がいい?」と呼ぶ声。悠斗は笑顔で「なんでもいいよ、母ちゃん!」と答える。
画面がゆっくり暗転し、星空に花火が消える。悠斗の夢の第一歩が、緑川町の温かな夜に刻まれた。

桜木遥のあとがき
第1話、いかがでしたか?悠斗くんの純粋な心と、祖父や母との絆が、私の胸を熱くしました。橋田壽賀子さんのように、日常の小さな瞬間に涙と笑いを込めたい。そんな思いで書きました。悠斗の夢はまだ始まったばかり。陽太くんや彩花さんとの出会いが、彼をどう変えるのか。次回も、温かな気持ちでご覧ください。

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