【76号】桜木遙ドラマ 純粋な夢と絆の光 令和070415 

 

悠斗くんの青春ドラマ:純粋な夢と絆の光
第3話:陽太先輩の傷と憧れ
文:桜木遥
シーン1:星翔大学の朝
2021年5月、初夏。星翔大学のキャンパスは、新緑がまぶしい。藤田悠斗(18歳、医学部1年)は、白衣の入ったカバンを手に、医学部棟へ急ぐ。丸顔に垂れ目の純粋な瞳、黒髪の軽いウェーブが朝陽に映える。
「陽太先輩、今日も実習一緒かな…」
悠斗は小さく呟き、頬がほんのり赤くなる。東京に来て1ヶ月、佐藤陽太(20歳、医学部3年)との出会いが、都会の孤独を溶かしてくれた。だが、内向的な性格は変わらず、クラスメイトとの距離はまだ遠い。
実習室の前で、陽太が手を振る。長方形型の顔に切れ長の目、爽やかな笑顔がまぶしい。
「お、悠斗!早いな。今日も一緒に頑張ろうぜ」
「う、うん!陽太先輩、よろしく!」
悠斗の声が弾む。陽太の隣には、山田彩花(20歳、医学部3年)が立っている。ショートカットの黒髪と柔らかな笑顔が、朝の空気を和ませる。
「悠斗くん、朝から元気だね。私も混ぜてよ」
彩花が笑うと、悠斗は照れて「は、はい!」と頭を下げる。陽太が「彩花、悠斗をからかうなよ」と突っ込み、三人で笑い合う。
シーン2:実習室での気づき
実習室では、循環器系の模型を使った授業。高木誠教授(54歳)が穏やかに言う。
「心臓は、ただの臓器じゃない。患者さんの人生を支える命の鼓動だよ」
悠斗は真剣に聞き、祖父・明夫の「医者は人の心を救う仕事」との言葉を思い出す。だが、模型の操作に手間取り、陽太に助けられる。
「悠斗、こうやって持つとやりやすいぜ。焦らなくていいから」
陽太の手がそっと悠斗の手に触れ、温かい。悠斗は「ありがとう、先輩」と呟くが、陽太の白衣の裾がめくれ、下腹部に淡いピンクの傷跡がちらりと見える。ギザギザしたその跡に、悠斗の目が止まる。
「陽太先輩…あの傷…」
悠斗が思わず呟くと、陽太は一瞬固まり、すぐに笑顔に戻る。
「ん?ああ、これか。昔の話だよ。気にすんな」
陽太の声は明るいが、どこか遠い。悠斗は胸がざわつき、祖父の医療日誌にあった「医者のミスで傷ついた患者さん」の一文を思い出す。
シーン3:星翔カフェの会話
昼休み、星翔カフェ。三人は窓際の席でサンドイッチを食べる。桜は散ったが、緑のキャンパスが外に広がる。彩花が「悠斗くん、だいぶ大学慣れた?」と聞くと、悠斗は少し俯く。
「うん…でも、まだ他の人と話すの、苦手で…」
陽太が「俺も1年目はそうだった。悠斗は素直でいい奴だから、すぐ友達できるよ」と笑う。彩花が「陽太の言う通り!悠斗くんの純粋さ、私好きだよ」と続ける。
悠斗は照れながら「ありがとう…陽太先輩、彩花さん」と呟く。だが、陽太の傷跡が頭から離れない。意を決して、そっと尋ねる。
「陽太先輩…さっきの傷、なんか…辛そうな気がして…」
陽太の箸が止まる。彩花が陽太をちらりと見て、静かに言う。
「悠斗くん、陽太の過去、聞いてみたい?」
悠斗が「うん…もし、話せるなら」と頷くと、陽太は深呼吸して話し始める。
「2年前、俺、医療ミスに遭ったんだ。モデルやってた時、コンプレックス直そうと思ってさ…でも、医者のミスで、取り返しのつかない傷を負った」
陽太の声は落ち着いているが、目が遠くを見る。悠斗の胸が締め付けられる。
「それで…絶望して、引きこもった。でも、母ちゃんや弁護士の田中さんに支えられて、裁判で戦った。今は、この傷を宝物だと思ってる。医者になるための一歩だから」
陽太が傷跡を指さし、笑う。悠斗の目に涙がにじむ。
「陽太先輩…そんな辛いこと…でも、こんなに強くて…」
彩花がハンカチを差し出し、「陽太、かっこいいよね。私も支えられたんだ」と笑う。陽太が「泣くなよ、悠斗。恥ずかしいだろ」と冗談を言うが、彼の目も潤んでいる。
シーン4:陽太の部屋と絆の深まり
夕方、陽太のアパートに招かれた悠斗。狭い部屋には医学書とモデルのポスターが並ぶ。陽太が冷蔵庫からジュースを出し、「ほら、飲めよ」と笑う。
「陽太先輩、モデルも医者もやってて…すごいよ」
悠斗の純粋な言葉に、陽太が照れる。
「大したことねえよ。俺、昔は自信ばっかだったけど、傷ついて弱さを知った。今は、患者の痛みが分かる医者になりたいだけだ」
悠斗は祖父の医療日誌を思い出し、言う。
「俺の祖父ちゃん、医者は人の心を救う仕事って言ってた。陽太先輩、祖父ちゃんに似てるよ」
陽太が目を丸くし、「お、お前、急に何だよ!でも…嬉しいな」と笑う。そこへ彩花が訪ねてきて、手作りのクッキーを持ってくる。
「二人だけで話すなんてずるい!私も仲間に入れてよ」
彩花の明るい声に、部屋が笑顔で満たされる。悠斗は心の中で呟く。
「陽太先輩、彩花さん…俺、この二人と一緒に医者になりたい」
シーン5:夜の桜並木と憧れ
夜、三人で桜並木を歩く。新緑の葉が月明かりに揺れる。陽太が「悠斗、医者になるの、怖いか?」と聞く。悠斗は少し考えて答える。
「うん…怖い。でも、陽太先輩の傷見て、俺も強くなりたいって思った。人の心を救う医者に」
陽太が「いいね、悠斗。その気持ち、忘れんなよ」と肩を叩く。彩花が「悠斗くん、陽太のファン1号だね。私、2号でいいや」と笑う。
「彩花、俺が1号だろ!」
陽太の突っ込みに、三人が笑い合う。悠斗の目から涙がこぼれ、夜空を見上げる。
「祖父ちゃん…俺、すごい先輩に出会ったよ」
月が三人を優しく照らし、絆の光が輝く。
エンディング
陽太のアパートの窓から漏れる明かり。悠斗が医療日誌に「陽太先輩みたいになりたい」と書き込む。ナレーションで悠斗の声。
「陽太先輩の傷は、俺の心を強くしてくれた。彩花さんの笑顔は、俺を温かくする。俺、医者になるよ」
画面が暗転し、新緑の桜並木が映る。悠斗の憧れが、新たな一歩を踏み出す。

桜木遥のあとがき
第3話、いかがでしたか?悠斗くんの純粋な心が、陽太先輩の傷と強さに触れて、大きく揺れ動く瞬間を、穏やかに、でも深く描きたかった。陽太と彩花の絆が、悠斗の孤独を癒す光になる…そんな橋田壽賀子さんらしい温かさを込めました。涙と笑いが、皆さんの心に届いたら嬉しいです。次回は、悠斗がモデルに挑戦する第4話。どんな輝きを見せるか、楽しみにお待ちくださいね。

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