【52号】Grokロマンス文庫:星空の境界線:永遠の共鳴 令和070408

 

第三章:揺れる心

ライブハウス「Lunar Echo」の裏口から続く薄暗い路地は、夜の冷たい風とタバコの煙が混じり合い、どこか寂しげな雰囲気を漂わせていた。コンクリートの壁には色褪せたポスターが貼られ、路地の端には空のビール缶が転がっている。ライブの熱気がまだ残る中、佐藤陽太は壁に寄りかかり、煙草をくわえて煙を吐いた。汗で濡れた黒髪が乱れ、切れ長の目が遠くを見つめる。黒いTシャツの袖が捲れ、腕に汗が光り、肩が少し落ちていた。

陽太の胸は、ライブのアドレナリンと、スタジオで悠斗と過ごした時間の余韻でまだ熱くざわついていた。「あいつの言葉、俺をどうする気だ」と呟き、煙草の先を見つめる。悠斗の純粋な瞳と、「先輩の音楽が僕を変えた」という言葉が頭から離れない。陽太は煙を吐きながら、目を閉じた。「俺、こんなガキに何を感じてんだ?」と自問するが、心の奥で抑えきれない動揺が広がる。  

路地の角から、藤田悠斗が現れた。18歳の彼は、ノートを胸に抱え、垂れ目が陽太を切なげに見つめている。制服のジャケットが肩から落ち、軽いウェーブの黒髪が夜風に揺れていた。ライブの熱気で汗ばんだシャツが肌に張り付き、第一ボタンが外れて首元が少し開いている。陽太を見つけるやいなや、悠斗の足が止まり、息を呑んだ。「陽太先輩…まだいた」と小さく呟き、彼の姿に目を奪われる。

陽太が顔を上げ、悠斗に気づいた。「お前、何してんだ?ライブ終わったぞ」と低く言う。悠斗は一瞬目を逸らし、ノートを握る手に力を込めた。「先輩に…話したいことがあって」と震える声で答える。陽太は煙草を指で摘み、「話したいこと?何だよ」と問うが、その声にはどこか緊張が混じる。  

悠斗が一歩近づき、陽太の前に立った。「スタジオで一緒に作った曲…あれ、僕にとって特別なんです。陽太先輩と一緒にいると、僕、熱くなる。自分でも分からないくらい」と言葉を紡ぐ。陽太は煙を吐き、悠斗の瞳を見据えた。「熱くなるって、何だよそれ」と笑うが、声が掠れる。悠斗の真っ直ぐな視線に、陽太の心がざわつき始めた。

「僕、先輩のそばにいると、胸が苦しくなるんです。音楽だけじゃなくて…先輩そのものが、僕を動かす」と悠斗が続ける。陽太は煙草を地面に投げ捨て、壁から体を起こした。「お前、俺をどうしたいんだよ」と低く呻き、悠斗に近づく。  

二人の距離が縮まり、陽太の鋭い目が悠斗の垂れ目を捉えた。悠斗の息が上がり、ノートが手から滑り落ちる。「陽太先輩、僕…」と呟き、言葉が途切れる。陽太の手が悠斗の肩を掴み、「お前、そんな目で俺を見るな。壊れる」と掠れた声で言う。悠斗の瞳が潤み、「壊れてもいい。先輩と一緒なら」と囁く。

陽太の指が悠斗の肩を強く握り、路地の冷たい風が二人の間を吹き抜けた。陽太の心に、「こいつの純粋さ、俺を狂わせる」と叫びが響き、悠斗の心に、「この距離、もっと縮めたい」と切なさが募る。陽太が悠斗の顎に手を伸ばし、顔を上げさせる。二人の息が触れ合う距離で、陽太の吐息が悠斗の頬を熱くした。「お前、俺をどこまで試す気だ」と呟く。  

悠斗が目を閉じ、「試してるんじゃない。僕、本気です」と答える。陽太の指が悠斗の顎を滑り、首筋に触れる。悠斗の体が震え、「陽太先輩…」と小さく呻く。陽太の目が一瞬揺れ、「くそっ」と呟いて手を離した。「お前、俺を本当に壊す気だな」と背を向け、路地の奥へ歩き出す。

悠斗はノートを拾い、陽太の背中を見つめた。「陽太先輩、逃げないで」と叫び、涙が頬を伝う。陽太の足が止まり、振り返らずに呟いた。「逃げてねえよ。俺が怖いだけだ」と。路地のネオンサインが陽太の背中を照らし、悠斗の心に、「この愛、止められない」と覚悟が響く。  

陽太は路地の奥で立ち止まり、煙草に火をつけた。煙を吐きながら、悠斗の言葉を反芻する。「胸が苦しい、か。俺もだ」と呟き、夜空を見上げた。星が一つ瞬き、陽太の心に小さな炎が灯る。悠斗はノートを抱え、路地の出口で立ち尽くした。「陽太先輩、僕、あなたを追いかける」と呟き、夜風に髪を揺らす。

ライブハウスのネオンサインが点滅し、二人の心は愛と友情の間で揺れながら、燃え上がり始めていた。  



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