【1297号】蓮と悠真が感じた「リンのかっこよさ」 令和080920

 

蓮と悠真が感じた「リンのかっこよさ」

ある日の夕方。

地域活動部の部室には、イベント帰りの少し気の抜けた空気が残っていました。

陽太は机で資料を整理し、彩花は写真を確認中。カイルは次の地域イベントの進行表を書き直していました。

リンは窓際で、制服のジャケットを椅子に掛け、袖をまくった白シャツ姿でストレッチをしています。

蓮と悠真は、少し離れたところからその様子を見ていました。

悠真が先に口を開きます。

「リン先輩って、なんであんなにかっこいいんだろう」

蓮。

「急だな」

「いや、前から思ってたけど」

蓮も少し考えます。

「顔がきれいだから、だけじゃないよな」

悠真はすぐにうなずきました。

「うん。それだけじゃない」


スカートだから、ではない

悠真にとって、リンはもともと複雑な存在でした。

高校時代。

遠くから見ていたころは、スカート姿だけを見て馬鹿にしていました。

でも今は違います。

自分も同じようにスカートを履くことがある。

だからこそ分かることも増えていました。

「スカート履いてるから目立つんじゃないんですよね」

蓮。

「じゃあ何?」

悠真は少し考えて、

「履いてても、そこを言い訳にしないところ」

と言いました。

踊りにくければ練習する。

ターンが崩れれば何度でもやり直す。

誰かに見られても、必要以上に気にしない。

でも無理に強がりもしない。

悠真は続けます。

「『俺はこうだから見て』って感じじゃなくて、普通にやってるじゃないですか」

それが、今の悠真には一番かっこよく見えていました。


蓮が見ていたもの

一方、蓮は別の部分を見ていました。

地域活動の現場で、リンは子どもにも高齢者にも距離を変えます。

元気な子には元気に返す。

人見知りの子には静かに話す。

高齢者の話は急かさず聞く。

イベントスタッフが困っていれば、ステージに立つ前でも手伝う。

そして終わったあと、

「ありがとうございました」

と必ず頭を下げる。

蓮は言いました。

「リン先輩って、自分が目立つ場面と、目立たなくていい場面を分かってるんだと思う」

悠真。

「それ、分かる」

蓮。

「ステージでは前に出るけど、地域活動では自分が中心じゃなくても平気なんですよね」

それは、蓮が陽太から学んでいたことにも近かった。

でもリンにはリンなりのやり方がありました。


失敗したとき

数日前。

中学校のバスケットボール指導で、悠真が中学生への説明をうまくできず、少し落ち込んだことがありました。

そのときリンは、

「俺も最初、人に教えるの下手だったよ」

と言いました。

悠真は驚きました。

「リン先輩でも?」

「当たり前じゃん」

そして笑いながら、

「できるようになったところだけ見せたら、後輩はしんどいでしょ」

と言った。

悠真はその言葉をずっと覚えていました。


過去を隠さない

蓮も、リンの強さを感じた瞬間があります。

悠真が高校時代にリンを馬鹿にしていたことを告白した日です。

リンは傷つかなかったふりをしませんでした。

「ちょっとムカつく」

とはっきり言った。

でも同時に、

「今の悠真がそう思ってないなら、それでいい」

とも言いました。

蓮はそのやり取りを横で聞いていて、強く印象に残りました。

「怒ることと、許すことを両方できるのって、結構すごいですよね」

悠真。

「うん」

蓮。

「何でも笑って流す人より、ちゃんと傷ついて、それでも前に進める人のほうが強い気がする」


悠真の答え

しばらく二人で黙っていると、リンが気づきました。


「何?」

悠真。

「いや、別に」

リン。

「絶対何かあるでしょ」

蓮が笑います。

「悠真が、リン先輩はなんでかっこいいんだろうって」

悠真。

「蓮!」

リンは一瞬固まりました。

「何それ」

悠真はもう仕方ないと諦めます。

「本当にそう思ってるんです」

リン。

「顔?」

悠真。

「自分で言うんですか」

部室が少し笑いに包まれます。

でも悠真は、今度は真面目に続けました。

「昔の俺は、リン先輩の格好しか見てなかったです」

リンは黙って聞きます。

「今は、どういう格好してるかより、どういうふうに人と接してるかを見るようになりました」

そして、

「自分の好きな格好をして、ちゃんと責任も持って、地域の人を大事にして、失敗しても隠さない。そこがかっこいいんだと思います」

リンは少し困ったように笑いました。

「言いすぎ」


蓮の答え

蓮も続けます。

「僕は、リン先輩って自由そうに見えるけど、実はすごく周りを見てる人だと思います」

リン。

「それ褒めてる?」

「かなり」

「好きなことをやるだけじゃなくて、それを受け入れてくれた人を大事にしてる。そこが強いです」

リンは少し黙りました。

そして、

「陽太がいたからだよ」

と答えます。

悠真。

「またそれ言う」

リン。

「本当だから」

陽太は少し離れた机から、

「俺を巻き込むな」

とだけ言いました。



かっこよさは見た目だけじゃない

その日の帰り。

蓮と悠真は並んで歩きながら話していました。

悠真。

「やっぱリン先輩、かっこいいな」

蓮。

「うん」

「俺もああなれるかな」

蓮は少し考えて、

「同じになる必要ないんじゃない?」

悠真が見る。

蓮は続けました。

「リン先輩自身が、ずっとそれ言ってるし」

悠真は笑いました。

「確かに」

二人はそこで少し納得しました。

リンのかっこよさは、

スカートを履いているからでも。

美しい顔立ちだからでも。

ダンスが上手いからだけでもない。

自分の選んだものに責任を持ち、周囲への感謝を忘れず、過去も弱さも隠さずに前へ進んでいること。

それが、蓮と悠真が感じたリンの一番のかっこよさでした。


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