【1327号】BOY&BOYISH 4 「お好み焼きの鉄板から、ドラマの脚本が生まれた」  令和080923

 

BOY&BOYISH 4

「お好み焼きの鉄板から、ドラマの脚本が生まれた」

第二部に入った海老楽大学地域活動部は、少しずつ「地域課題を解決する場所」だけではなくなっていました。

もちろん、清掃も福祉も学校連携も続けています。

でも、それだけではない。

地域で楽しむ。
学生が遊ぶ。
笑う。
作品をつくる。

そんな活動も増え始めていました。

その象徴になったのが、竹本翔太でした。


文芸演劇部との《お好み焼きミーティング》

ある晩。

翔太は海老楽大学の文芸演劇部の学生たちと、恒例のお好み焼きミーティングを開いていました。

鉄板では豚玉が焼けています。

ソースの香り。

湯気。

ミルクコーヒーを横に置いた翔太は、いつものように話を聞いていました。

演劇部員の一人が言います。

「大学で一本、ちゃんとドラマ作ってみたいんですよね」

別の学生。

「でも普通の青春ドラマじゃ面白くない」

「恋愛もの?」

「感動系?」

「コメディ?」

そこへ加代が言いました。

「全部入れれば?」

一瞬、全員が黙りました。

翔太。

「全部?」

「笑えて、最後はちょっと泣けるラブストーリー」

文芸演劇部員。

「そんな都合のいい脚本あります?」

そのとき、隣でお好み焼きを返していたリンが言いました。

「陽太主演でいいじゃん」

陽太。

「なんで俺」

悠真。

「相手役リン先輩で」

陽太。

「なんでそうなる」

全員が笑いました。

翔太は、その会話を聞きながらノートを開きました。


翔太、突然書き始める

加代。

「竹本君?」

「ちょっと待って」

翔太は何かを書き始めています。

タイトル。

人物。

場面。

セリフ。

文芸演劇部員が覗き込みます。

「え、もう書いてる?」

翔太。

「今の会話、使えそうだったので」

リン。

「俺たち勝手にドラマにされてる?」

翔太。

「まだ仮です」

陽太。

「その“まだ”怖いな」


タイトル

数日後。

翔太が持ってきた脚本の表紙には、

『君と笑って、たぶん恋をする。』

と書かれていました。

副題は、

海老楽大学青春ラブコメディ

カイルが表紙を見て、

「竹本、こういうの書けたの?」

翔太。

「自分でも知りませんでした」

彩花。

「最近みんな、自分の才能を後から発見するわね」


爆笑感動ラブストーリー

物語の主人公は、性格が正反対の大学生二人。

一人は、

不器用だけれど誠実。

人前では落ち着いているが、恋愛には致命的に鈍い。

もう一人は、

明るく人懐っこいが、実は傷つきやすい。

冗談で本音を隠す癖がある。

もちろん、モデルはかなり明らかでした。

陽太。

「これ俺?」

翔太。

「完全一致ではありません」

リン。

「じゃあ俺は?」

翔太。

「かなり参考にしました」

リン。

「俺の方が正直じゃん」


コメディ場面

脚本には、笑える場面が大量にありました。

二人が初デートだと互いに認識していないまま映画館へ行く。

陽太役が、

「これは地域活動の視察」

と言い張る。

リン役。

「映画館のどこを視察するの?」

陽太役。

「座席配置」

リン役。

「嘘が下手すぎる」


別の場面では、

二人がお好み焼きを一緒に作ります。

陽太役が完璧にひっくり返そうとして失敗。

床には落とさなかったものの、形が完全崩壊。

リン役。

「恋愛もお好み焼きも、力入れすぎると壊れるんだね」

陽太役。

「今それ言う?」

店内爆笑。


でも、最後は感動

物語の後半。

リン役の人物が、

「自分は誰かに大切にされるような人間じゃない」

と弱音を吐きます。

そこで陽太役は、

派手な告白をしません。

ただ、

「俺は、お前が自分のことを嫌いでも、勝手に大事にするから」

と言います。

脚本を読んでいた部室が静かになりました。

悠真。

「……これ普通にずるいですね」

彩花。

「翔太、文才あるわ」

加代。

「高校新聞部で記事書くだけじゃもったいなかったね」

翔太は少し照れました。


大学制作ドラマへ

カイルはすぐに動きました。

「これ、撮ろう」

翔太。

「本気ですか?」

「本気」

彩花。

「大学公式?」

カイル。

「まず学生制作」

文芸演劇部。

地域活動部。

映像研究会。

軽音楽部。

写真部。

美術系学生。

さらにEBIRAKU CONNECTも制作協力に入ります。

いつの間にか、

海老楽大学横断ドラマ制作プロジェクト

になりました。


配役

主演は、

佐藤陽太

そして、

林 明(リン)

本人たちです。

陽太。

「俺、演技経験ないけど」

カイル。

「普段通りでいい」

リン。

「それ一番難しくない?」

翔太。

「台詞は二人に合わせて書いてます」

陽太。

「逃げ道がない」





撮影開始

撮影は海老楽大学内だけではありませんでした。

商店街。

お好み焼き店。

公園。

バス停。

海沿いの遊歩道。

EBIRAKUブランドの店舗。

地域住民にもエキストラとして参加してもらいました。


お好み焼き店のシーン

最も盛り上がったのは、

物語の重要場面でもあるお好み焼き店。

翔太の行きつけの店がロケ地になりました。

店主。

「俺も出るの?」

翔太。

「普通に焼いていてください」

店主。

「それなら毎日やってる」

撮影が始まります。

リンが台詞。

陽太が受ける。

ところが店主がアドリブで、

「付き合ってるんなら喧嘩するなよ」

と言ってしまいました。

陽太。

「台本にないです」

リンが吹き出します。

監督。

「カット!」

スタッフ爆笑。

翔太。

「……これ採用しましょう」


陽太の演技

意外だったのは陽太でした。

最初こそ硬かったものの、

撮影が進むにつれて自然になります。

派手な表情はしない。

でも、

視線。

間。

小さな仕草。

それが妙にリアル。

文芸演劇部の学生。

「陽太先輩、演技うまくない?」

リン。

「昔から感情を顔に出さないから」

陽太。

「褒めてる?」


リンの演技

一方、リンは表現力が強い。

ダンスで培った身体表現。

視線の使い方。

立ち位置。

感情の切り替え。

カイル。

「リン、舞台向きだと思ってたけど映像でも強いな」

彩花。

「顔だけじゃなくて、表情の変化が映る」

慎一郎が取材に来て、

「リン先輩、普通に俳優ですね」

リン。

「違う違う」

慎一郎。

「否定が弱い」


主題歌も大学制作

せっかくなので、

主題歌も学生制作になりました。

軽音楽部とBOY&BOYISH 4が共同制作。

タイトルは、

「笑って、まだ隣にいる」

陽太とリンがデュエット。

蓮と悠真がコーラス。

カイルが演出。

翔太は作詞にも一部参加しました。

彩花。

「竹本君、脚本だけじゃなく歌詞も?」

翔太。

「文章なので」

加代。

「その説明、万能すぎる」


完成試写会

完成したドラマは約45分。

ジャンル表記は、

青春・恋愛・コメディ・地域ドラマ

学内試写会では、

笑い声。

拍手。

そして後半では、

泣いている学生もいました。

陽太はエンドロールを見ながら言いました。

「自分が出てると恥ずかしいな」

リン。

「俺はもう慣れた」

「早いな」


海老楽テレビへ

試写会を見た海老楽テレビの担当者が言いました。

「これ、うちで放送しませんか」

彩花。

「本当に?」

「土曜の地元娯楽枠で」

こうして、

『君と笑って、たぶん恋をする。』

は、

海老楽テレビの地元娯楽枠

で放送されることになりました。


放送当日

土曜夜。

地域活動部の部室。

全員がテレビの前に集まりました。

お好み焼き。

たこ焼き。

ジュース。

当然です。

翔太。

「なんでまたお好み焼きなんですか」

彩花。

「始まりがそこだから」

放送開始。


地域の反応

翌日。

海老楽テレビには感想が届きました。

「久しぶりに家族で笑った」

「最後泣いた」

「商店街がドラマに出て嬉しい」

「あのお好み焼き店どこ?」

「陽太君が意外と演技うまい」

「リン君かわいいだけじゃなく芝居もすごい」

「続編ください」

特に、

お好み焼き店への問い合わせ

が急増しました。

店主。

「また売上上がったぞ」

翔太。

「意図してません」

彩花。

「最近その台詞多いね」


視聴率より大切なもの

海老楽テレビ側も予想以上の反響に驚きました。

再放送。

配信。

出演者インタビュー。

撮影地紹介。

関連企画が次々と決まります。

しかしカイルは言いました。

「全国展開は急がない」

テレビ局担当。

「どうして?」

「これは海老楽市で作ったドラマだから」

まず地元で育てる。

それが、彼らのやり方でした。


翔太の新しい肩書き

地域活動部のホワイトボード。

竹本翔太の役割に、

新しい文字が増えました。

記録・記事整理

地域取材

お好み焼きミーティング

そして、

脚本

翔太。

「これ正式なんですか?」

彩花。

「もう逃げられないわよ」

カイル。

「次の企画あるから」

翔太。

「もう?」


慎一郎の感想

東高校新聞部の慎一郎もドラマを見ていました。

取材に来たとき、

「翔太先輩」

「何?」

「めちゃくちゃ面白かったです」

翔太。

「ありがとう」

「でも陽太先輩とリン先輩って、本当にああいう関係なんですか?」

部室が静まりました。

陽太。

「違う」

リン。

「そこはご想像にお任せします」

陽太。

「おい」

全員爆笑。


鉄板から始まった物語

数か月前。

ただのお好み焼きミーティングでした。

学生が食事をしながら話していただけ。

そこから、

一つのアイデア。

一冊の脚本。

大学横断の制作チーム。

地域ロケ。

音楽。

テレビ放送。

地域店舗への新しい客。

が生まれました。


彩花の記事

彩花はブログに書きました。

「お好み焼き一枚から、ドラマ一本。」

地域活動には、
問題を解決する活動があります。

でも、
一緒に笑う活動もあります。

楽しいものをつくること。

街の人に笑ってもらうこと。

明日また誰かと話したくなる作品をつくること。

それも、地域を元気にする方法かもしれません。


こうして竹本翔太は、

新聞記事を書く人から、物語を書く人へ。

BOY&BOYISH 4は、

歌って踊るユニットから、ドラマの主演へ。

海老楽大学地域活動部は、

福祉や地域課題だけでなく、

地域に笑いと感動を届ける娯楽制作

という新しい扉を開きました。

そして文芸演劇部では、すでに次の会議が始まっていました。

場所はもちろん、

海老楽市のお好み焼き店。

翔太はミルクコーヒーを一口飲み、

ノートを開きます。

「次、何書きましょうか」

カイル。

「その前に注文しよう」

リン。

「俺、海鮮ミックス」

陽太。

「豚玉」

翔太。

「……まず食べますか」

鉄板が、またジュウッと音を立てました。

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