【1328号】BOY&BOYISH 4 「続編、今度は“朝ドラ級”で」  令和080923

 


BOY&BOYISH 4

「続編、今度は“朝ドラ級”で」

海老楽テレビで放送された大学制作ドラマ、

『君と笑って、たぶん恋をする。』

は、予想以上の人気になりました。

放送直後から海老楽テレビには、

「続編が見たい」

「陽太とリン、その後どうなるの?」

「今度はもっと長く見たい」

「商店街のみんなも出してほしい」

「家族で見られるドラマにして」

という声が次々に届きました。

最初は数十件。

それが数百件。

そして、再放送のたびにまた増えていきます。

局内ではついに、

「続編企画を正式に立ち上げよう」

という話になりました。


海老楽テレビからの依頼

ある日。

地域活動部へ、海老楽テレビの制作担当者がやって来ました。

机の上には、視聴者から届いた感想の束。

彩花。

「こんなに?」

担当者。

「まだ一部です」

カイル。

「すごいな」

リン。

「そんなに見られてたんだ……」

陽太。

「恥ずかしくなってきた」

そして担当者が言いました。

「続編をお願いしたいです」

部室がざわつきます。

翔太。

「続編?」

「はい。ただ今回は、45分一本ではなく」

少し間を置いて、

「連続ドラマにしたい」


翔太、黙る

全員の視線が竹本翔太へ集まりました。

翔太。

「……なんで僕を見るんですか」

彩花。

「脚本家だから」

翔太。

「いつから正式に」

カイル。

「前作が当たった瞬間」

加代。

「諦めた方がいいよ」

翔太は眼鏡を押し上げました。

「連続ドラマって、何話ですか?」

担当者。

「まずは全12話を想定しています」

翔太。

「12……」

リン。

「顔が止まった」


翔太の条件

翔太は少し考えてから言いました。

「恋愛だけの話にはしたくないです」

担当者。

「と言うと?」

「陽太とリンだけじゃなく、街そのものを主人公にしたい」

カイルの目が変わりました。

翔太は続けます。

「商店街」

「大学」

「高校」

「家族」

「昔から住んでる人」

「最近来た人」

「子ども」

「高齢者」

「失敗した人」

「これから始める人」

「そういう人たちの生活が少しずつつながっていく話にしたいです」

海老楽テレビの担当者はうなずきました。

「それ、いいですね」

彩花。

「完全に翔太ワールドになってきた」


そして翔太は消えた

そこから数週間。

翔太は暇さえあれば書いていました。

授業。

地域活動。

取材。

お好み焼きミーティング。

その合間に脚本。

ノート。

パソコン。

メモ。

店で聞いた会話。

商店街のおばあさんの一言。

小学生の言葉。

大学生の悩み。

高齢者の昔話。

全部が材料になります。

加代が言いました。

「竹本君、ちゃんと寝てる?」

「寝てます」

「何時間?」

「……そこは企業秘密です」

「寝なさい」


完成した脚本

約一か月後。

翔太が部室へ持ってきたのは、

分厚い脚本でした。

表紙には、

『この街で、また笑おう。』

と書かれていました。

全12話。

1話45分。

かなりの分量です。

カイル。

「これ一人で書いたの?」

翔太。

「はい」

彩花。

「怖いくらい書いてる」


朝ドラ級の構成

脚本を読んだ全員が驚きました。

ただの続編ではありませんでした。

最初のドラマが、

陽太とリンの爆笑感動ラブストーリー

だとすれば、

今回は、

海老楽市で暮らす人々の群像劇

になっていました。

しかも毎話、中心人物が少しずつ変わります。


第1話

「また、隣にいる」

前作から数か月後。

陽太とリンは相変わらず微妙な距離感。

周囲は完全に付き合っていると思っているのに、本人たちだけ認識がずれている。

笑える始まり。

しかし同時に、

商店街の古い店が閉店を考えていることが分かります。


第2話

「店を閉める日」

主人公は高齢の店主。

50年間続けた店。

後継者はいない。

店主は言います。

「街ってのは、俺がいなくても続くもんだ」

でも実は寂しい。

リンと陽太は、無理に店を残そうとはしません。

最後に、

地域の人たちがその店で最後の一日を過ごします。

笑って、

食べて、

写真を撮る。

そして店は閉まる。

でも翌日、

その場所に若い人の店が入る話が始まります。


第3話

「初めての店」

今度は若い夫婦。

夢を持って店を始めたけれど客が来ない。

竹本翔太のお好み焼きミーティングのグルメ企画が関わり、

学生たちが店を知る。

少しずつ客が増える。

でも、

「学生のおかげで成功した店」

にはしたくない。

店主自身の努力が描かれます。


第4話

「帰ってきた人」

都会へ出ていた若者が海老楽へ戻ってくる。

しかし、

「地元に戻る=失敗」

と思われるのが嫌で、素直になれない。

加藤直哉が、その人物と話します。

「戻るって、負けじゃないと思う」

加藤だから言える台詞でした。


第5話

「スカートの日、パンツの日」

リンが主役。

服装についての話です。

スカートでも、

パンツでも、

どちらでもリンはリン。

服装を「勇気の象徴」にしすぎず、

ただ自分の好みとして描く。

そこへ子どもが言います。

「今日はスカートじゃないんだ」

リン。

「今日はこっち」

「そっちも似合う」

それだけ。

翔太は、この短いやりとりを大事な場面にしました。


第6話

「許さなくてもいい」

加藤の回。

過去のことを知った地域住民から距離を置かれます。

加藤は傷つきます。

しかしリンは言います。

「相手にも信用しない自由がある」

加藤。

「じゃあどうしたらいい?」

「続けるしかない」

更生を美談にしない。

信頼には時間がかかる。

翔太らしい回でした。


第7話

「新聞部が来た」

山下慎一郎、川野忠、若野美佐子たち東高校新聞部が登場。

取材を通して、

高校生の視点から大学生たちを見る回。

慎一郎とリンの友情も丁寧に描かれます。

重い話の合間に、

忠が写真を撮りすぎてSDカードを満杯にする、

美佐子が全員の誤字を冷静に直す、

というコメディも入ります。


第8話

「お好み焼きは会議室」

翔太自身をモデルにした回。

学部も年齢も違う人たちが、

鉄板を囲んで話す。

口論。

笑い。

食べる。

また話す。

最終的に、

「話し合いの場所は会議室じゃなくてもいい」

という結論になります。


第9話

「歌が街を歩く」

BOY&BOYISH 4の音楽回。

「この街で、ずっと。」

が地域のイベントで歌われ、

子ども。

大学生。

高齢者。

それぞれが別の場所で同じ曲を口ずさむ。

歌そのものが、

人をつなぐモチーフになります。


第10話

「家族に言えないこと」

今回は学生の家族が中心。

悩みを抱えているのに、

親に言えない学生。

親も、

子どもに何を言えばいいか分からない。

教育学部で学んだこと。

地域福祉。

当事者経験。

それらが交差します。


第11話

「この街を出る日」

卒業や就職が近づき、

「いつまでもこのメンバーではいられない」

という現実が見え始めます。

陽太。

リン。

彩花。

カイル。

全員が初めて、

それぞれの未来を本気で考えます。

ここで視聴者をかなり泣かせる構成でした。


最終話

「この街で、また笑おう。」

最後は大事件ではありません。

朝。

商店街。

店が開く。

バスが走る。

小学生が登校する。

高齢者が散歩する。

大学生が自転車で通る。

BOY&BOYISH 4が歩いている。

ただの日常。

そして陽太とリン。

二人は海沿いを歩きます。

リン。

「卒業してもここ来る?」

陽太。

「来るよ」

リン。

「俺がいなくても?」

陽太。

「お前がいなくても来る」

リン。

「ちょっとは寂しがれよ」

陽太。

「でも」

陽太が少し笑います。

「お前がいた方が楽しい」

リンは何も言わず、

ただ笑う。

画面が街の景色へ。

主題歌。

エンドロール。


部室が静かになった

脚本を読み終えたあと。

誰もすぐに喋りませんでした。

最初に口を開いたのは彩花。

「翔太……これ、本当にすごいわ」

加代。

「前作と全然違う」

カイル。

「朝ドラみたいだ」

悠真。

「普通に毎朝見たいです」

蓮。

「夜ドラだけど」


海老楽テレビへ持ち込む

完成稿を読んだ海老楽テレビの制作陣も驚きました。

担当者。

「竹本さん」

翔太。

「はい」

「これ、ローカル局で作る規模じゃなくなってません?」

翔太。

「……すみません」

担当者。

「褒めてます」

前にも聞いたような会話でした。


制作決定

海老楽テレビは正式に、

『この街で、また笑おう。』

全12話の制作を決定。

枠も拡大。

通常の地元娯楽番組ではなく、

海老楽テレビ開局記念・地域連続ドラマ

として扱われることになりました。


キャスト

陽太。

リン。

蓮。

悠真。

彩花。

カイル。

翔太。

加代。

加藤。

慎一郎。

東高校新聞部。

商店街の人たち。

地域住民。

そして一般公募のエキストラ。

海老楽市そのものが出演者になりました。


撮影前夜

翔太は行きつけのお好み焼き店にいました。

店主。

「またでかい話になったな」

翔太。

「僕もそう思います」

「最初はここで話してただけだろ」

「はい」

店主がお好み焼きを返します。

ジュウッ。

翔太はミルクコーヒーを飲みました。

そして脚本の最終ページを開きます。

そこには一行。

「特別な人じゃなくても、特別な物語はある。」

店主。

「いい話になりそうか?」

翔太。

少し笑って、

「たぶん」

と答えました。


こうして竹本翔太は、

新聞部の記事を書く高校生から、
地域の人々の人生を書く脚本家へ。

そしてBOY&BOYISHの物語は、

一組の大学生たちの青春ドラマから、

街全体を描く連続ドラマ

へ進化していきました。

次に鉄板の上で焼かれるのはお好み焼き。

そして翔太のノートの上では、

海老楽市の新しい物語が、また焼き上がろうとしていました。

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