【1331号】BOY&BOYISH 4 「見せないことまで、デザインする。」  令和080924

 


BOY&BOYISH 4

「見せないことまで、デザインする。」

EBIRAKUブランドが地域に定着し始めた頃、海老楽大学地域活動部へ一人の若手デザイナーが訪れました。

海老楽市を拠点に活動する、新進気鋭の服飾デザイナー。

名前は、

藤崎レオ(ふじさき れお)

まだ20代半ば。

地元の縫製会社と組みながら、ユニセックスな服や舞台衣裳を手がけていました。

彼が地域活動部へ持ってきたのは、二着の新しい制服風衣裳でした。

届け先は、

リン。
悠真。

でした。


「スカートは残します」

彩花がハンガーに掛かった衣裳を見ながら言いました。

「今回はパンツスタイルじゃないのね」

藤崎。

「はい。スカートです」

リンが少し笑います。

「久しぶりに王道ですね」

悠真。

「でも、前とかなり形違いますね」

確かに違いました。

従来の短いプリーツスカートをそのまま再現したものではありません。

一見すると軽快で短め。

しかし歩いたり、ターンしたりすると、布の重なり方が独特でした。

リン。

「これ、かなり考えてありますね」

藤崎。

「見えそうに見えて、実際には見えない構造にしました」

悠真。

「それ、今回のテーマ?」

藤崎。

「かなり重要です」


きっかけは盗撮対策

彩花が資料を開きます。

今回の衣裳には、もう一つ目的がありました。

盗撮防止キャンペーン。

地域イベントや大学祭。

駅。

商店街。

観光地。

スマートフォンが当たり前になった今、服装に関係なく、

本人が望まない角度から撮影される問題

が起きています。

リン自身も、活動中にスマートフォンを不自然な位置へ向けられた経験がありました。

悠真も言います。

「ライブとかだと、撮ってる人多いですからね」

彩花。

「写真撮影そのものを敵にしたいわけじゃないの」

「撮っていい場所」

「撮っていい時間」

「撮っていい角度」

「本人が嫌がる撮影」

それを考えるきっかけにしたい。


新型スカートの仕組み

藤崎は衣裳を机に広げました。

外見は普通のプリーツスカート。

しかし内部はかなり違います。

1. 一体型インナーショーツ

スカート内部には、衣裳と完全に一体化したスポーツ用ショーツ。

別の下着が見える構造ではありません。

激しく踊っても、

ジャンプしても、

ステップしても、

衣裳として完結します。


2. 二重プリーツ構造

外側のプリーツの下に、

もう一枚、

短い内側パネル。

特定の角度から見ても、直接内部が見えないようになっています。

悠真。

「カメラのローアングルも?」

藤崎。

「かなり防げます」


3. 裾ウェイト

裾の一部には、ごく軽い重り。

通常の歩行では全く気になりません。

しかし風が吹いたとき、

スカートが一気にめくれ上がりにくくなります。

リン。

「なるほど」

「海沿いのイベントでもいいですね」


4. ターン対応

リンが特に気にしたのはここでした。

「ターンしたらどうなる?」

藤崎。

「試してみてください」


リン、ターンする

練習室。

リンは新衣裳へ着替えました。

紺色のショートジャケット。

白シャツ。

細いリボンタイ。

そして新型プリーツスカート。

従来より少しスポーティー。

でも制服風の雰囲気は残っています。

音楽。

リンがターン。

スカートが円を描きます。

ふわっと広がる。

しかし、

内部は見えません。

陽太。

「かなり自然だな」

蓮。

「防止機能があるように見えない」

藤崎。

「そこを一番大事にしました」


悠真バージョン

悠真の衣裳は少し違いました。

リンより軽いシルエット。

プリーツ幅を細くして、

動いたときの表情を強くしています。

ジャケットも短め。

悠真。

「これ、普通に好きです」

彩花。

「機能のためにデザインが犠牲になってないのがいいわね」

藤崎。

「防犯服に見せたくなかったんです」


「見せない」ことを主張しすぎない

ここでリンが重要なことを言いました。

「これ、“隠してます”って大きく言いすぎない方がいいかも」

彩花。

「どうして?」

リン。

「本人が好きな服を着ることと、盗撮されないようにすることは別だから」

スカートを履く。

短い服を着る。

身体を動かす。

だから撮っていい。

そんな理屈にはならない。

リン。

「俺たちの服が変わることで解決するんじゃなくて、撮る側のマナーも変わらないと」

藤崎はうなずきました。


キャンペーン名

カイルがホワイトボードへ書きます。

「見えない制服キャンペーン」

彩花。

「ちょっと違う」

悠真。

「防犯商品っぽい」

翔太。

「もっと柔らかい方がいいですね」

しばらく案が出ます。

そして採用されたのは、

「好きな服を、安心して。」

でした。

副題は、

EBIRAKU PRIVACY WEAR PROJECT


商店街で初披露

新衣裳の初披露は、

海老楽市のファッションイベント。

リンと悠真が並んで登場しました。

観客から、

「新しい衣裳だ!」

「前より軽そう!」

「かわいい」

「かっこいい」

いろんな声が飛びます。

しかし今回は、

衣裳紹介のあとに彩花が短く説明しました。

「この衣裳には、本人が安心して活動できる工夫が入っています」

撮影禁止ではありません。

公式撮影エリア。

観客撮影可能エリア。

撮影不可エリア。

分かりやすく表示しました。


「撮影していいですか?」

イベント終了後。

一人の高校生がリンへ聞きました。

「写真撮っていいですか?」

リン。

「もちろん」

「ありがとうございます」

リンは笑います。

そして写真を撮った高校生は、

「ちゃんと聞けばいいんですね」

と言いました。

リン。

「そう。それだけで全然違うよ」


悠真の感想

控室。

悠真は衣裳を見ながら言いました。

「面白いですね」

リン。

「何が?」

「昔の俺なら、短いスカート見て笑ってた」

少し間を置いて、

「今は、どうしたら安心して着られるか考えてる」

リンは笑いました。

「だいぶ変わったね」

悠真。

「リン先輩のせいです」

リン。

「責任押しつけるな」


デザイナー藤崎レオ

この衣裳は大きな反響を呼びました。

地元メディア。

大学。

学校。

アパレル業界。

特に評価されたのは、

「安全のために服装を地味にしない」

という考え方でした。

藤崎。

「安心するために、おしゃれを諦める必要はないと思っています」

そして、

「服を着る人が我慢するだけの対策にはしたくない」

と言いました。


EBIRAKUブランドへ

新衣裳の技術は、その後EBIRAKUブランドにも応用されます。

スカート。

キュロット。

スポーツウェア。

子ども用衣類。

イベントスタッフ用衣裳。

風対策。

動作対策。

プライバシー対策。

それぞれを、

デザインの中に自然に埋め込む

という方向へ発展していきました。


彩花の記事

彩花はブログに書きました。

「好きな服を、安心して。」

短い服を着るから悪い。

スカートだから仕方ない。

そういう話ではありません。

撮られたくないものを撮られないこと。

撮影されるかどうかを本人が選べること。

それは服装とは別の話です。

私たちは、
好きな服を着る自由と、
安心して過ごせる環境の両方を大切にしたいと思います。


新しい制服衣裳

その後、

リンと悠真の衣裳には、

制服スタイル Ver.2

という呼び名が付きました。

スカートは残った。

でも、

昔と同じではありません。

より軽く。

より動きやすく。

より安全に。

そして、

より自由に。

リンは鏡の前で新衣裳を整えながら言いました。

「結局、スカートってだけじゃなくなったね」

悠真。

「最初からそうだったのかもしれませんね」

リン。

「かもね」


BOY&BOYISHが最初に見せたのは、

服装の違い。

そして今、

その服は、

デザイン、防犯、プライバシー、地域産業、ファッション

までつなぐものになっていました。

新しいプリーツスカートが揺れるたび、

そこにあるのは、

「見えるか、見えないか」

ではなく、

「誰が決めるのか」

という新しいメッセージでした。

人気の投稿