【1338号】BOY&BOYISH 4 「球場を満員にした応援席」 令和080924
BOY&BOYISH 4
「球場を満員にした応援席」
海老楽大学野球部にとって、その大学リーグ戦は大きな意味を持っていました。
相手は毎年上位争いをする強豪校。
海老楽大学も近年は力をつけていましたが、野球部の試合はまだ「大学関係者が中心の催し」という色が強く、球場が満員になることなどありませんでした。
ところが、その年。
地域活動部に野球部から一つの相談が持ち込まれました。
「今度のリーグ戦、応援席をもっと盛り上げたいんです」
話を聞いたカイルは、すぐに陽太たちを見ました。
「やる?」
悠真。
「何をです?」
カイル。
「BOY&BOYISH 4、チアリーディング」
一瞬、部室が静まりました。
リン。
「……俺たちが?」
彩花。
「面白そうじゃない」
陽太。
「またカイルが始めた」
男子4人のチアリーディング
もちろん、ただチアリーダー風の衣裳を着るだけではありません。
海老楽大学のチアリーディング部、応援団、吹奏楽系サークルにも協力を依頼しました。
BOY&BOYISH 4は、
大学野球応援のスペシャルパフォーマー
として参加することになりました。
衣裳は藤崎レオが担当。
海老楽大学のネイビーを基調に、
白と金のライン。
ショートジャケット。
軽量素材。
動きやすいシューズ。
陽太と蓮はパンツスタイル。
リンと悠真はプリーツスカートを取り入れたチアスタイル。
ただし、従来の制服衣裳とは違い、
完全にスポーツ応援仕様。
ジャンプ。
ターン。
キック。
ダンス。
どれだけ動いても崩れにくい設計です。
リン。
「これ、かなり動ける」
悠真。
「普通に競技用ですね」
藤崎。
「応援衣裳ですから」
練習開始
チアリーディング部から指導を受けると、4人の身体能力が一気に生きました。
陽太はジャンプと着地。
リンはターン。
蓮はフォーメーション管理。
悠真はリズムと瞬発力。
チア部員が驚きます。
「ダンスやってる人って覚えるの早いですね」
カイル。
「この4人、球技も強いですよ」
チア部員。
「何者なんですか」
彩花。
「地域活動部です」
説明になっていませんでした。
応援の目的
しかしカイルは、一つだけ条件をつけました。
「BOY&BOYISH 4のショーにしない」
主役は野球部。
応援団。
チア部。
吹奏楽。
そして観客。
4人はその中の一つのパーツです。
陽太。
「目立ちすぎない?」
カイル。
「盛り上げる。でも試合より目立たない」
リン。
「難しい注文だね」
彩花の広報
彩花は試合の告知方法を変えました。
従来の、
「海老楽大学野球部リーグ戦」
だけではなく、
「海老楽市みんなで応援DAY」
として地域へ発信。
商店街。
小学校。
中学校。
高校。
高齢者施設。
地域企業。
EBIRAKUブランド取扱店。
お好み焼きミーティングで関わった飲食店。
あらゆる場所にポスターが掲示されました。
翔太も動く
竹本翔太は地域飲食店を回りました。
「試合の日、球場周辺でテイクアウト販売しませんか」
お好み焼き。
たこ焼き。
唐揚げ。
おにぎり。
地元菓子。
いつしか試合日は、
小さな地域祭り
のようになっていました。
慎一郎たちも取材
東高校新聞部も特集を組みました。
山下慎一郎。
川野忠。
若野美佐子。
三人で事前取材。
忠。
「野球部なら俺の担当だな」
慎一郎。
「新聞部なのに元野球部だから強いね」
忠。
「自称・野球部専属カメラマンですから」
若野。
「自称なんだ」
試合当日
朝。
球場前。
野球部員がバスから降りてくると、
すでに人が並んでいました。
主将。
「……え?」
スタッフ。
「開場待ちです」
「こんなに?」
列はさらに伸びていきます。
家族連れ。
高校生。
大学生。
商店街の店主。
高齢者。
子どもたち。
BOY&BOYISH 4のファンもいますが、
多くの人が海老楽大学そのものを応援しに来ていました。
開場30分後
観客席が埋まり始めます。
一塁側。
内野席。
外野席。
普段なら空席が目立つ場所まで、人が入っていきます。
球場職員が無線で言いました。
「満席に近づいています」
大学職員。
「え?」
「追加席、準備します」
初めての満員
試合開始直前。
スコアボードに発表が出ました。
本日の観客数
満員御礼
海老楽大学野球部のリーグ戦史上、
初めて球場が満員になりました。
野球部員たちはベンチから客席を見上げました。
主将。
「嘘だろ……」
監督。
「ちゃんと見とけ」
「これだけの人が、お前たちを見に来たんだ」
BOY&BOYISH 4登場
試合前セレモニー。
場内アナウンス。
「本日は海老楽大学地域活動部、BOY&BOYISH 4が応援パフォーマンスに参加します!」
歓声。
音楽が始まります。
陽太。
リン。
蓮。
悠真。
4人がグラウンド脇へ。
ネイビーと白のチアスタイル。
ポンポン。
大きな旗。
そしてチアリーディング部と合流します。
「EBIRAKU!」
陽太。
「いくぞ!」
4人。
「EBIRAKU!」
観客席。
「EBIRAKU!」
もう一度。
「EBIRAKU!」
子ども。
大学生。
高齢者。
商店街の人。
全員の声が重なりました。
リンと悠真
リンと悠真は前列へ。
ターン。
ステップ。
キック。
プリーツスカートが大きく動きます。
しかし藤崎レオの設計したスポーツ仕様。
動きは大胆でも安心して踊れる。
悠真。
「リン先輩!」
「何?」
「めちゃくちゃ楽しい!」
リン。
「試合見ろ!」
笑いながら次の振付へ。
陽太と蓮
陽太は高いジャンプ。
着地。
蓮は全体を見ながら位置を調整。
応援団の旗。
吹奏楽。
チア。
BOY&BOYISH 4。
全部が一つの応援になります。
カイルはスタンド後方から見ていました。
「これだよ」
彩花。
「何が?」
「4人だけのステージじゃない」
試合開始
初回。
海老楽大学がいきなりピンチ。
二死満塁。
投手がマウンドで深呼吸します。
スタンドから、
「がんばれー!」
子どもの声。
さらに、
「海老楽!」
「海老楽!」
大声援。
投手が投げる。
空振り三振。
球場が揺れました。
応援席も試合をつくる
中盤。
海老楽大学は1点を追う展開。
7回。
ランナー二塁。
打席には主将。
BOY&BOYISH 4が応援団と一緒に前へ。
リン。
「まだいける!」
陽太。
「声出そう!」
観客全体が立ち上がります。
主将が打つ。
打球は右中間。
二塁ランナーがホームイン。
同点。
球場が爆発しました。
悠真は蓮に抱きつき、
蓮。
「まだ同点!」
悠真。
「今は喜んでいいでしょ!」
9回裏
2対2。
二死一、三塁。
球場中が立っていました。
海老楽大学の打者が打席へ。
投球。
打球。
三遊間。
抜ける。
三塁ランナーがホームへ。
サヨナラ。
満員の球場が立ち上がる
野球部員がグラウンドへ飛び出します。
観客席も総立ち。
吹奏楽。
応援団。
チア。
BOY&BOYISH 4。
歓声が全部混ざります。
リンは思わず叫びました。
「やったー!」
陽太も普段にはない大声。
「勝った!」
野球部からの言葉
試合後。
主将がBOY&BOYISH 4のところへ来ました。
「ありがとう」
陽太。
「俺たち何もしてないですよ」
主将。
「いや」
そして満員の客席を指します。
「これ見たことなかったから」
選手たちも観客席を見上げます。
「大学野球って、こんなに人が来るんだな」
海老楽市の試合になった
海老楽テレビは、その日のニュースで大きく報じました。
「海老楽大学リーグ戦、史上初の満員」
しかし話題になったのは観客数だけではありません。
子どもと大学生が一緒に応援。
商店街が出店。
高校新聞部が取材。
高齢者も観戦。
地域企業も協力。
大学スポーツが、
海老楽市全体の娯楽
になったことでした。
商店街でも
翌日。
翔太が行きつけのお好み焼き店へ行くと、
店主が言いました。
「昨日すごかったな」
翔太。
「行きました?」
「行ったよ」
「野球なんて30年ぶりに見た」
翔太。
「どうでした?」
店主。
「また行きたい」
野球部から新しい依頼
数日後。
地域活動部へ野球部の監督が来ました。
「次のホームゲームもお願いできますか」
カイル。
「チアですか?」
監督。
「それもですが」
少し笑って、
「また街の人に来てもらいたい」
彩花。
「それなら、こっちの仕事ですね」
チアスタイルも人気に
藤崎レオがデザインした応援衣裳も評判になりました。
特に、
リンと悠真のプリーツスカート型チアウェア。
「スポーツ感があっていい」
「男女関係なく着られそう」
「大学の応援衣裳として欲しい」
という声が出ます。
藤崎。
「また商品化の話?」
彩花。
「EBIRAKUブランドへようこそ」
藤崎。
「嫌な予感がする」
そして恒例行事へ
翌年。
海老楽大学野球部のホームリーグ戦。
再び球場は満員。
その次も。
いつしか、
「海老楽大学野球の日」
は、地域の春と秋の恒例行事になりました。
リンの一言
試合後。
誰もいなくなった球場。
リンと陽太が客席を見ていました。
リン。
「最初、学園祭だったよね」
陽太。
「うん」
「今度は野球場満員にした」
陽太。
「俺たちがしたわけじゃない」
リン。
「そうだね」
そして笑います。
「街のみんなで満員にしたんだね」
BOY&BOYISH 4の新しい役割は、
歌うことでも、
踊ることでもありませんでした。
誰かが楽しんでいる場所へ、さらに人を連れてくること。
学園祭から始まった4人は、
今度は大学スポーツと地域を結びました。
そして、
海老楽大学野球部の歴史に初めて刻まれた、
「満員御礼」
その文字の向こうには、
海老楽市の人々の笑顔がぎっしり詰まっていたのでした。




