【1290号】BOY&BOYISH 4、サッカー部へ 令和080919
BOY&BOYISH 4、サッカー部へ
「ダンスだけじゃなかったのか」
海老楽大学サッカー部から地域活動部へ、少し変わった依頼が届きました。
週末に行われる学内向けの練習試合で、人数調整を兼ねてBOY&BOYISH 4の四人にも参加してほしいというものでした。
最初にメールを読んだ彩花は、思わずカイルを見ました。
「四人、サッカーできるの?」
カイルも首を傾げます。
「陽太はできそうだけど……全員は知らない」
そこへリンが通りかかります。
「何の話?」
「サッカー部から練習試合のお誘い」
リンは即答しました。
「出る」
後ろにいた陽太も、
「面白そう」
蓮と悠真も顔を見合わせます。
「僕もやります」
「俺も!」
あっさり四人全員参加になりました。
練習前から様子がおかしい
当日。
四人はユニット衣裳ではなく、海老楽大学のトレーニングウェア姿でグラウンドに現れました。
サッカー部員の中には、
「テレビに出てる人たちだ」
「歌って踊る四人だよな?」
と少し珍しそうに見る学生もいます。
部員の一人が冗談交じりに、
「今日はケガしない程度でお願いします」
と言うと、陽太は普通に、
「はい」
と答えました。
ところがウォーミングアップが始まって数分。
サッカー部員たちの表情が変わります。
リンの切り返しが速い。
悠真も細かいステップで簡単に相手をかわす。
蓮は走るフォームが崩れず、かなり長くペースを維持する。
そして陽太。
ジャンプの着地が得意というだけあって、空中でのバランスが妙にいい。
カイルが腕を組みます。
「……思ってたよりだいぶできるな」
彩花はすでにカメラを構えていました。
前半
チーム分けでは、四人を同じ側に固めず、サッカー部員の中へ分けて配置しました。
陽太は中央。
リンはサイド。
蓮は後方。
悠真は前線寄り。
試合開始。
最初に目立ったのはリンでした。
ボールを受ける。
相手が寄せる。
リンは普段のターンそのままのような動きで体を反転。
相手を一人かわします。
ベンチ。
「速っ」
もう一人が寄せてきます。
今度はボールを外へ出して、そのまま加速。
サイドを一気に上がっていきます。
サッカー部員。
「リン、クロス!」
リンが中央へボールを送る。
そこに入ってきたのが陽太でした。
陽太のジャンプ
陽太が踏み込みます。
そして跳ぶ。
カイル。
「高っ」
普段のステージで何度も見てきたジャンプですが、ボールを目標にすると別の能力に見えます。
空中で体勢を合わせ、
ヘディング。
ボールはゴール方向へ。
キーパーが辛うじて弾きました。
サッカー部員から声が上がります。
「何でそんな跳べるんですか!」
陽太。
「ダンスで?」
リンが走りながら、
「疑問形なんだ」
蓮の意外な能力
一方の蓮。
派手なプレーはしません。
ただ、相手がどこへパスするかをよく見ています。
一歩先へ動いてボールを奪う。
無理に前へ運ばず、味方へ正確に渡す。
そしてまた位置を取り直す。
サッカー部の主将がその様子を見ていました。
「高橋、経験者?」
蓮。
「小学生のとき少しだけです」
「少し?」
「はい」
主将。
「少しの動きじゃないぞ」
蓮は困ったように笑います。
地域活動でも周囲をよく見て行動する性格が、そのままサッカーにも出ていました。
悠真、速い
前線では悠真が走り回っていました。
もともとダンスでも軽い動きを得意とする悠真。
初速が速い。
味方から縦パス。
悠真が走る。
ディフェンダーと並びます。
次の瞬間、一歩前。
ボールに追いつきます。
キーパーが出てくる。
悠真は強く蹴るのではなく、軽く横へ流しました。
走り込んできたサッカー部員がシュート。
ゴール。
部員たちが悠真のところへ集まります。
「今のうまい!」
悠真。
「俺、シュートするより渡したほうがいいかなって」
ベンチの彩花。
「普通に判断してるじゃん」
カイル。
「誰なんだ、あいつら」
後半、四人を同じチームへ
監督が面白がりました。
「最後の20分、BOY&BOYISH 4を同じチームに入れてみよう」
四人。
「え?」
観戦していた学生たちから拍手。
彩花も笑います。
「完全にイベントになってきた」
四人が同じユニフォームを着て並びます。
試合再開。
すると、さらに面白いことが起きました。
ダンスで培った呼吸
四人は普段、ステージで互いの位置を常に確認しています。
誰が前へ出るのか。
誰が下がるのか。
次の瞬間どこに移動するのか。
それを言葉にしなくても把握する訓練を積んでいます。
その感覚がサッカーでも出ました。
陽太がボールを持つ。
言葉を交わさず、リンが外へ走る。
蓮が後ろへ下がってパスコースを作る。
悠真が中央へ入る。
陽太からリン。
リンから蓮。
蓮がワンタッチで前へ。
悠真が走り込む。
サッカー部員が思わず叫びます。
「何でそんな連携できるんだ!」
カイルは答えを知っていました。
「毎週一緒に踊ってるからだよ」
四人でつないだゴール
試合終盤。
蓮がボールを奪いました。
陽太へ。
陽太が前へ運ぶ。
リンが左サイドを走る。
パス。
リンは相手を引きつけてから中央へ返します。
悠真が受ける。
シュートできる位置です。
しかし悠真は蹴らない。
もう一度、陽太へ戻しました。
陽太が走り込んでシュート。
ゴール。
観戦していた学生たちから歓声が上がりました。
四人は思わず集まります。
悠真。
「やった!」
リン。
「陽太、決めた!」
陽太。
「悠真、自分で打てただろ」
「先輩のほうが入ると思ったんで」
蓮は笑いながら、
「ステージみたいでしたね」
と言いました。
サッカー部監督、驚く
試合終了。
サッカー部監督が四人を呼びました。
全員、何か注意されるのかと思って少し緊張します。
しかし監督は笑っています。
「君たち、普段何してるの?」
四人。
「地域活動です」
「それは知ってる」
監督が聞きたいのはそういう意味ではありません。
「体幹、瞬発力、持久力、それに周りを見る能力。普通の学生よりかなり高いよ」
陽太。
「ダンスの練習は結構します」
リン。
「イベントだと何曲も続けて踊ることありますし」
蓮。
「走る活動も多いです」
悠真。
「地域イベントって意外と体力使うんですよ」
監督は納得したような、していないような顔。
「地域活動部ってそんな運動部だったかな……」
一同、笑いました。
彩花の記事
翌日。
地域活動部のブログに彩花の記事が公開されました。
タイトルは、
「歌って踊って、今日はサッカー。」
記事には、
BOY&BOYISH 4の活動は、ステージだけではありません。
歌うための呼吸。
踊るための体幹。
仲間を見る習慣。
地域を歩き回る体力。それぞれ別々に見えたものが、サッカー場では全部つながっていました。
一番驚いていたのはサッカー部のみなさんでしたが、たぶん私たちも同じくらい驚いていました。
と書かれていました。
カイル、新しい企画を思いつく
記事を読み終えたカイル。
少し考えます。
彩花が嫌な予感を察知。
「その顔、何か考えたでしょ」
カイル。
「地域スポーツ交流企画」
彩花。
「やっぱり」
カイルはすでにノートへ、
BOY&BOYISH 4 × 海老楽大学運動部
と書いていました。
リンがそれを見つけます。
「次、何やるの?」
カイル。
「まだ決めてない」
陽太。
「絶対もう考えてるだろ」
蓮。
「野球とか?」
悠真。
「バスケもやってみたい」
カイルは笑います。
「候補が増えたね」
こうしてBOY&BOYISH 4は、歌とダンスだけではなく、高い身体能力とチームワークまで大学中に知られるようになりました。
そしてサッカー部の練習試合は、地域活動部にまた一つ、新しい活動の扉を開いたのでした。

