【1298号】BOY&BOYISH 4、信頼を失いかけた日 令和080920
BOY&BOYISH 4、信頼を失いかけた日
「人気が出ても、たるむな」
BOY&BOYISH 4の活動が広がり、地域で名前を知られるようになったころ。
陽太とリンは、後輩の蓮と悠真に何度も同じことを話していました。
「人気が出ても、たるんだら駄目だよ」
陽太は静かに言います。
「信頼って、積み上げるのは時間かかるけど、壊れるのは一瞬だから」
リンも続けます。
「俺たちは地域に受け入れてもらって今がある。だから、外でどう振る舞うかも活動の一部だよ」
蓮は真剣にうなずきました。
悠真も、
「分かってます」
と答えていました。
その時点では、本当にそう思っていました。
友人とのラーメン店
数週間後。
活動のない夜。
悠真は高校時代からの友人たちと、海老楽市内のラーメン店に入りました。
久しぶりに会った友人たちとの時間。
昔話。
冗談。
笑い声。
最初は普通でした。
しかし話が盛り上がるにつれて、声は少しずつ大きくなっていきます。
他の客が振り返る。
店員が一度、
「すみません、少しお静かにお願いします」
と声をかけました。
悠真は、
「あ、すみません」
と答えます。
そこで終わればよかった。
でも数分後にはまた大きな笑い声。
友人の一人がテーブルを叩く。
別の友人が大声で昔の話を始める。
悠真も流されてしまいました。
「あれ、BOY&BOYISH 4の子じゃない?」
店内の客の一人が気づきました。
「テレビ出てる大学生じゃない?」
その言葉で、周囲の視線が一気に集まります。
悠真もようやく、自分が誰として見られているかを思い出しました。
でも遅かった。
店主は何度も我慢したあと、
「他のお客様もいらっしゃるので、これ以上は困ります」
とはっきり伝えました。
悠真たちは店を出ました。
その夜、悠真はかなり落ち込みました。
しかし翌日。
もっと重いことが起きます。
大学へ苦情
海老楽大学に、ラーメン店から連絡が入りました。
内容は、
地域活動部所属の学生らしき人物が、店内で騒いでいた。
しかも店側から注意したあとも、しばらく騒ぎが続いた。
大学は地域活動部へ確認を求めました。
部室。
彩花が電話の内容を読み上げます。
空気が凍りました。
悠真はすぐに顔を伏せました。
「……僕です」
陽太は何も言いません。
蓮も黙っています。
リンだけが、悠真をまっすぐ見ていました。
リンが本気で叱る
普段のリンは、後輩に対してかなり柔らかい。
失敗しても、
「次直せばいいよ」
と笑うことが多い。
でも、この日は違いました。
「悠真。何やってるの?」
声は大きくありません。
だからこそ重かった。
悠真。
「すみません」
リン。
「俺に謝ってどうするの」
悠真は黙ります。
「前に言ったよね。信頼は一瞬で壊れるって」
悠真。
「はい」
「しかも店員さんに注意されてるんでしょ?」
「はい」
リンの表情が厳しくなります。
「それで続けたなら、“知らなかった”じゃないよ」
部室は完全に静かでした。
「俺たちがテレビに出てるから偉いわけじゃない。
地域で活動してるから特別扱いされるわけでもない。
むしろ見られてる分、普通以上に気をつけなきゃいけないんだよ」
悠真の目が赤くなります。
リンはさらに言います。
「高校時代に地域へ迷惑かけて、変わりたいって言ったよね」
「……はい」
「じゃあ、昔に戻っちゃ駄目だろ」
悠真は何も返せませんでした。
陽太の言葉
少し時間を置いて、陽太が口を開きます。
「失敗はする。でも、注意されたあとどうするかで、その人が分かる」
悠真は小さく、
「はい」
と答えます。
陽太。
「今回は俺たちも行く。でも、謝るのは悠真本人だからな」
悠真。
「分かってます」
ラーメン店へ
その日の夕方。
悠真。
陽太。
リン。
三人で店を訪れました。
カイルと彩花も同行しましたが、店の前で待つことにしました。
店内。
店主が出てきます。
悠真はすぐに深く頭を下げました。
「昨日は本当に申し訳ありませんでした。注意していただいたのに、すぐに改めず、ご迷惑をおかけしました」
店主は黙って聞きます。
そして陽太とリンも、悠真の横に並びました。
二人は、ほとんど土下座に近いほど深く頭を下げます。
「後輩の行動で、大学と地域活動部の名前まで使ってご迷惑をおかけしました。申し訳ありません」
悠真は驚いて横を見ます。
リン。
「前向いて」
悠真はもう一度頭を下げました。
店主の反応
店主は、しばらく黙っていました。
それから、
「そこまでしなくていい」
と言いました。
三人が顔を上げます。
「騒いだことより、注意しても直さなかったことが嫌だったんだ」
悠真。
「はい」
「でも今日、こうやって来たなら分かったよ」
店主は少し表情を和らげます。
「次から気をつけてくれればいい」
悠真はもう一度、
「本当にすみませんでした」
と頭を下げました。
店を出たあと
外へ出ると、悠真はしばらく何も言えませんでした。
そして、
「リン先輩、陽太先輩……僕のことであんなに頭下げさせて、すみません」
と絞り出しました。
リンはすぐに、
「それを俺たちに返そうとしなくていい」
と言います。
悠真。
「でも」
「次から同じことしない。それで返して」
陽太も、
「信頼って、謝っただけで元通りになるわけじゃないから」
と続けます。
「これからの行動で戻していくしかない」
悠真は黙ってうなずきました。
彩花の判断
彩花は、この件をブログやSNSで美談にはしませんでした。
「謝罪に行きました」
「反省しました」
と発信することもしない。
カイルも同意しました。
「反省は広報材料じゃない」
地域活動部内部では記録を残し、同じことが起きないようにルールを確認。
でも外へ向けては、必要以上に話題にしませんでした。
それもまた、信頼を守るための判断でした。
悠真の変化
それ以降。
悠真は、以前よりさらに周囲をよく見るようになりました。
飲食店では声の大きさに気をつける。
友人が騒ぎ始めたら、
「ちょっと静かにしよう」
と自分から言う。
イベント後も、
「俺たち、一般のお客さんと同じだから」
と仲間に声をかける。
ある日。
蓮が言いました。
「変わったね」
悠真。
「痛い目見たから」
蓮。
「そういう意味じゃなくて」
悠真は少し笑います。
「信頼って、本当に一瞬なんだなって分かった」
リンの最後の言葉
数週間後。
地域イベントの帰り。
リンが悠真に言いました。
「もう引きずらなくていいよ」
悠真。
「いいんですか?」
「反省して、行動変わったなら、それでいい」
そして少し笑って、
「でも次やったら、本気でもっと怒る」
悠真。
「十分本気でしたよ、あれ」
リン。
「まだ上あるよ」
悠真。
「怖いです」
二人とも少し笑いました。
BOY&BOYISH 4は、いつも完璧な学生たちではありません。
失敗することもある。
調子に乗りかけることもある。
でも、その失敗を隠さず、誰かのせいにもせず、自分たちで信頼を取り戻す。
それもまた、地域に育てられてきたユニットに必要な成長だったのでした。
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