【1299号】BOY&BOYISH 4、海老楽大学、揺らぐ信頼 令和080920
海老楽大学、揺らぐ信頼
BOY&BOYISH 4が立った「大学と地域のあいだ」
海老楽大学で、地域活動部とは別の部に所属する学生たちによる飲酒絡みの不祥事が発覚しました。
大学内ではすぐに問題となり、該当する部には活動停止処分。大学も公式に謝罪しました。
しかし、それだけでは終わりませんでした。
海老楽市の商店街や地域イベントの現場では、
「海老楽大学、大丈夫なの?」
「学生にイベントを任せても平気なのかな」
という声が少しずつ聞かれるようになります。
もちろん、不祥事を起こした学生と地域活動部は別です。
それでも地域から見れば、どちらも海老楽大学の学生。
大学全体を見る目が変わり始めていました。
地域活動部にも影響
ある日、彩花のところに地域イベント主催者から連絡が入ります。
「今回の出演ですが、少し様子を見たいという意見がありまして……」
彩花は電話を切ったあと、しばらく何も言いませんでした。
カイルが聞きます。
「キャンセル?」
「まだ決定じゃない。でも、大学への不信感が出てる」
陽太も表情を曇らせます。
蓮。
「僕たちまで信用されなくなるんですか」
リンはすぐには答えませんでした。
そして静かに、
「それが地域から見た大学ってことなんだと思う」
と言いました。
悠真も、以前ラーメン店で騒いで大学へ苦情が入った自分の経験を思い出していました。
「一人の行動でも、大学全体に見えるんですよね」
陽太がうなずきます。
「だからこそ、俺たちも気をつけろって言ってきたんだ」
「信頼を取り戻すイベント」をやろう
カイルはしばらく考えたあと、ホワイトボードに大きく書きました。
海老楽大学 × 地域
ありがとう交流デー
彩花。
「謝罪イベント?」
カイルは首を振ります。
「違う。謝罪をショーにしたら駄目だよ」
不祥事そのものについては、大学が正式に対応する。
地域活動部がやるべきことは、
大学には、地域と真剣に向き合っている学生もいる
ということを、言葉ではなく行動で示すことでした。
リンも賛成します。
「俺たちが『信じてください』って言っても仕方ない。見てもらおう」
陽太。
「普段やってることを、そのまま全部やればいい」
イベント内容
内容は派手なライブ一本ではありませんでした。
むしろ、BOY&BOYISH 4らしい構成です。
午前は、
- 商店街清掃
- 小学生とのあいさつ運動
- 地域高齢者との交流
- 子ども向けスポーツ体験
午後は、
- 中学生バスケット部との交流
- 地元商店のPRブース
- 地域住民との座談会
- 大学の活動紹介
そして最後に、
BOY&BOYISH 4のミニライブ。
カイルは言います。
「ライブは最後。まず、地域活動を見てもらう」
彩花も広報では、
「大学を見に来てください」
という言葉を使いました。
「信頼回復」
「イメージアップ」
という表現は、あえて避けます。
当日
イベント当日。
最初の客足は、いつもより少なめでした。
地域の人たちも少し様子を見ている。
BOY&BOYISH 4の四人にも、それは伝わっていました。
陽太。
「まあ、当然だな」
リン。
「焦らなくていい」
蓮。
「いつも通りやりましょう」
悠真。
「はい」
そして四人は、いつも通り動き始めました。
商店街清掃
朝。
陽太と蓮が通りを掃きます。
リンと悠真は店先のゴミを集め、商店主に一軒ずつ挨拶。
「おはようございます」
「今日はよろしくお願いします」
ある店主が、
「大変だね、大学も」
と言いました。
リンはそこで弁解しませんでした。
「はい。でも、僕たちは僕たちで、できることをちゃんとやります」
店主は少しだけ表情を和らげました。
子どもたちとの交流
午前後半。
小学生が集まり始めます。
以前あいさつ運動で会った子が、
「リンくん!」
と走ってきました。
悠真にも、
「バスケ教えて!」
陽太には、
「サッカーやろう!」
蓮には、
「この前のゲームまたやりたい!」
子どもたちは、大学の不祥事なんて気にしていません。
目の前の四人を、そのまま見ていました。
それを見た保護者たちの表情も、少しずつ柔らかくなっていきます。
地域住民との座談会
午後。
一番緊張したのが、地域住民との座談会でした。
学生側には、地域活動部の六人。
地域側には、商店主、保護者、高齢者、自治会関係者。
ある住民が率直に聞きました。
「今回の件で、大学全体に不安を感じた人もいると思います。皆さんはどう考えていますか」
陽太が答えます。
「僕たちは当事者ではありません。でも、大学の一員ではあります」
リンも続けます。
「だから『自分たちは関係ない』で終わらせたくないです」
悠真は自分の経験にも触れました。
「僕も以前、飲食店で騒いで大学に迷惑をかけました。だから、行動ひとつで信頼が変わることは分かっています」
部屋が静かになります。
悠真。
「信頼してくださいとは言いません。これからの行動を見てください」
その言葉に、何人かがうなずきました。
最後のステージ
夕方。
広場には、午前よりずっと多くの人が集まっていました。
BOY&BOYISH 4がステージへ。
この日は制服スタイル。
陽太。
リン。
蓮。
悠真。
四人が並びます。
最初に歌ったのは、公募曲の一つ。
そして最後は代表曲、
「この街で、ずっと。」
スクリーンには、この日の様子が映ります。
清掃。
子どもたち。
商店街。
バスケットボール。
高齢者との交流。
笑顔。
四人が歌い終わるころには、観客から大きな拍手が起きていました。
商店主の一言
イベント終了後。
以前、
「海老楽大学、大丈夫なの?」
と話していた商店主が、陽太たちのところへ来ました。
「今日は来てよかったよ」
陽太。
「ありがとうございます」
店主は続けます。
「大学にはいろんな学生がいるんだな」
リン。
「はい」
「でも、君たちは前から変わらないね」
その言葉に、四人は少しだけ安心しました。
彩花の記事
翌日。
彩花はブログを書きました。
タイトルは、
「信頼は、言葉ではなく積み重ね」
本文には、
大学で問題が起きたから、私たちまで疑われた。
それを不公平だと思うこともできます。でも、地域から見れば私たちは同じ大学の学生です。
だから昨日は、説明するより、一緒に過ごしました。
掃除をして、話して、遊んで、スポーツをして、最後に歌いました。
信頼は、一日で完全に戻るものではありません。
でも、一日からまた積み上げることはできます。
学長からの言葉
後日。
学長は地域活動部を呼び、
「今回のイベントは、大学の印象を飾り直したものではありません」
と話しました。
「皆さんがこれまで積み上げてきた関係があったから、地域ももう一度大学を見てくれたのです」
カイルもその言葉にうなずきます。
不信感は消えたのではなく、上書きされた
数週間後。
地域イベントの出演依頼は元に戻っていきました。
商店街。
小学校。
中学校。
市役所。
以前と変わらず、地域活動部へ声がかかります。
一度生まれた不信感が、魔法のように消えたわけではありません。
でも、
「海老楽大学には、ちゃんと地域と向き合っている学生たちがいる」
という実感が、それを少しずつ上書きしました。
そしてBOY&BOYISH 4にとっても、この出来事は大きな教訓になります。
人気があるから信頼されるのではない。
テレビに出ているからでもない。
歌が上手いからでもない。
普段の行動があるから、いざというときに信じてもらえる。
それが、四人があらためて知った「地域活動」の意味でした。






