【1305号】BOY&BOYISH 4 俺たちが謝らなきゃいけない 令和080921

 


BOY&BOYISH 4

「俺たちが謝らなきゃいけない」

ラーメン店での出来事から数日後。

海老楽大学、地域活動部の部室。

陽太とリンはイベント資料を整理し、蓮は翌月の中学校バスケットボール指導の日程を確認していました。

悠真は窓際で、商店街清掃活動の参加者名簿をまとめています。

そのとき。

コンコン。

部室のドアが叩かれました。

彩花が顔を上げます。

「はい、どうぞ」

ドアが開きました。

そこに立っていたのは、三人の若い男性でした。

悠真の表情が変わります。

「……お前ら」

ラーメン店で一緒だった、高校時代の友人たちでした。


「悠真じゃないんです」

三人は部室へ入ると、妙に緊張した様子で並びました。

いつもの軽い雰囲気はありません。

一人が口を開きます。

「地域活動部の人たちですよね」

陽太。

「そうだけど」

青年は深く頭を下げました。

残りの二人も続きます。

「すみませんでした」

部室が静かになります。

リンは悠真を見る。

悠真自身も事情が分かっていないようでした。

「何しに来たんだよ」

すると友人の一人が言いました。

「この前のラーメン屋のこと」


本当は誰が騒いでいたのか

彼らは事情を説明し始めました。

ラーメン店で昔話が盛り上がり、大声で笑っていたのは自分たちだった。

悠真は最初から、

「ちょっと声でかいぞ」

「店だから静かにしよう」

と何度も注意していた。

店員から注意されたあとも、

「ほら、言っただろ。もう静かにしろって」

と友人たちを止めていた。

それでも彼らは、

「久しぶりなんだからいいだろ」

「これくらい普通だって」

と軽く考え、また声が大きくなってしまった。

悠真は途中からほとんど話さなくなり、最後には店員へ、

「すみません。俺からもちゃんと言います」

と謝っていたというのです。


悠真は一緒に謝った

問題が起きたあと。

悠真は、

「俺は騒いでないから知らない」

とは言いませんでした。

同じ席にいた以上、自分にも責任がある。

そう考えて、店にも大学にも事情を説明しました。

しかし友人たちは、そのことをあとから知ります。

一人が言いました。

「俺たち、悠真が地域活動部で何やってるのか、正直そんなに知らなかったんです」

テレビで見たことはある。

地域イベントに出ていることも知っていた。

でも、それをどれだけ大切にしているのかまでは分かっていませんでした。


リンの存在

もう一人の友人が、少し言いにくそうに続けます。

「悠真、ずっと言ってたんです」

リンが顔を上げました。

「何を?」

青年は悠真を見る。

悠真は、

「言わなくていいって」

と止めます。

しかし友人は続けました。

「リン先輩にだけは迷惑かけたくないって」

悠真は黙りました。


高校時代との違い

高校時代。

悠真たちは、商店街で騒いだり、大人から注意されても軽く流したりしていました。

リンの姿を遠くから見て笑ったことさえあります。

しかし大学へ入ってからの悠真は違いました。

友人たちと会っても、

「店の前にたまるなよ」

「ゴミ持って帰れよ」

「店員さん困らせるなって」

と言うようになっていました。

友人たちは最初、それを冗談にしていました。

「大学入って真面目になったな」

「地域活動部の優等生かよ」

悠真も笑って流していました。

しかし今回。

自分たちが騒いだことで、悠真が大学へ頭を下げた。

そして、尊敬している先輩たちにも心配をかけた。

そこで初めて気づいたのです。

悠真は「いい子ぶっている」のではなかった。

本気で変わったのだ、と。


「謝る相手が違う」

友人の一人が、悠真へ頭を下げます。

「悪かった」

悠真は言いました。

「俺に謝ってどうすんだよ」

その言葉を聞いて、リンが少し笑いました。

どこか聞き覚えのある言葉でした。

悠真も気づいて、リンを見る。

「……リン先輩の真似じゃないですよ」

「分かってる」

部室に少しだけ笑いが戻ります。


地域活動部へ謝罪

三人は改めて、部員たちへ向き直りました。

「俺たちが騒いだことで、悠真だけじゃなく、この部にも迷惑をかけました」

「海老楽大学にもです」

「本当にすみませんでした」

深く頭を下げました。

陽太はしばらく三人を見ていました。

そして、

「顔を上げて」

と言います。


陽太の言葉

陽太は責めませんでした。

「謝りに来たことは大事だと思う」

ただし、

「俺たちに謝ったから終わりじゃないよ」

とも言いました。

ラーメン店で迷惑をかけたのなら、一番の謝罪相手は店です。

三人もうなずきました。

「このあと行きます」


リンから友人たちへ

リンも静かに言いました。

「悠真は、俺たちの信頼を裏切ってないよ」

悠真が驚いてリンを見る。

リンは続けます。

「むしろ今回、ちゃんと止めようとしてたって聞いて安心した」

悠真。

「……はい」

「でもさ」

リンは三人の友人を見る。

「悠真だけ変わっても、昔の友達がずっと同じままだったら、悠真もしんどいと思う」

三人は黙って聞いていました。

「だから今回を機会に、みんなで変わればいいんじゃない?」

説教というより、提案でした。


「地域活動って何してるんですか」

そこで意外な質問が出ました。

一人が、部室の壁に貼られた写真を見ます。

小学校のあいさつ運動。

商店街清掃。

中学校バスケットボール部。

高齢者との交流。

地域イベント。

「これ、全部やってるんですか?」

彩花。

「だいたい」

「大変じゃないですか」

蓮。

「結構大変です」

悠真。

「でも楽しいぞ」

その返事に、友人たちは少し驚きました。


「俺たちも手伝えますか」

そして一人が言いました。

「今度の商店街清掃……俺たちも参加できますか」

悠真。

「え?」

「別に部員じゃなくても参加できるんですよね?」

彩花が答えます。

「地域ボランティア枠があります」

三人は顔を見合わせます。

「じゃあ、参加します」

悠真は思わず笑いました。

「お前ら朝早いぞ」

「それくらい起きるわ」

「高校のとき遅刻ばっかだったじゃん」

「今は社会人だぞ」

部室の空気が一気に軽くなりました。


商店街清掃の日

翌週の日曜日。

朝7時30分。

集合場所にはBOY&BOYISH 4と地域活動部。

そして。

眠そうな顔をした三人の青年が立っていました。

悠真。

「本当に来た」

「来るって言っただろ」

全員に軍手とゴミ袋が配られます。


あの商店街

そこは、悠真たちが高校時代に騒いでいた商店街でもありました。

掃除をしながら、一人がつぶやきます。

「高校のとき、ここにゴミ捨てたことあるな……」

悠真。

「今さら思い出すなよ」

「いや、なんか……」

青年はゴミを拾います。

「昔の俺ら、結構ひどかったな」

悠真は笑いました。

「俺もだよ」

そして続けます。

「だから今やってんだろ」


店主との再会

清掃の途中。

かつて彼らを注意した商店主が出てきました。

悠真たちを見る。

一瞬、誰なのか思い出せないようでした。

しかし、

「あれ?」

と表情が変わります。

「君たち、昔ここで騒いでた子たちじゃないか」

三人は固まりました。

「……はい」

青年の一人が頭を下げます。

「その節は、本当にすみませんでした」

店主はしばらく黙っていました。

そして、笑いました。

「まあ、今こうやって掃除してるんならいいじゃないか」


悠真が変えたもの

帰り道。

友人の一人が悠真に言いました。

「お前、すげえな」

悠真。

「何が?」

「大学行って人生変わってるじゃん」

悠真は首を振ります。

「俺一人じゃないよ」

少し前を歩くリンを見る。

そして陽太。

蓮。

彩花。

カイル。

地域活動部の仲間たち。

「変わるきっかけをもらっただけ」


リンと悠真

その日の活動終了後。

リンが悠真へ言いました。

「悠真」

「はい」

「友達、いい奴らじゃん」

悠真は苦笑します。

「昔は全員ろくでもなかったですけどね」

リン。

「お前も?」

「もちろん」

「自信満々に言うな」

二人は笑いました。

そして悠真は少し真面目な顔になります。

「俺、リン先輩が信じてくれたことだけは絶対裏切りたくないです」

リンは即答しました。

「知ってるよ」

悠真。

「え?」

「だから今回も、最初から疑ってない」


信頼とは

悠真は、その言葉をしばらく忘れられませんでした。

信頼とは、

絶対に失敗しないと思われることではない。

失敗しそうなときに止まれること。

周りが間違えたときに、一緒になって流されないこと。

そして友人が間違えたなら、

切り捨てるのではなく、

一緒に立て直すこと。

悠真がリンから受け取った信頼は、今度は高校時代の友人たちへ渡っていきました。

かつて商店街で迷惑をかけていた若者たちは、

今度はその商店街で、

ゴミ袋を片手に歩いていました。

BOY&BOYISH 4の地域活動は、また一つ、

人から人へ広がっていったのでした。



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