【1306号】BOY&BOYISH 4 「衣裳も、地域でつくろう」 令和080921
BOY&BOYISH 4
「衣裳も、地域でつくろう」
ある日の地域活動部。
次の季節イベントに向けて、彩花は過去の写真を並べていました。
制服スタイル。
ストリートデニム。
ショートデニム。
ライブ衣裳。
そこへカイルが新しいステージ構成案を持ってきます。
「次は春の商店街イベントだから、少し軽い雰囲気にしたいな」
リンが写真を見ながら言います。
「制服スタイル、だいぶ定着しましたよね」
悠真。
「俺、この形好きですけどね」
すると彩花が、少し考えてから口を開きました。
「でも、衣裳ってスカートにこだわる必要もないわよね」
一瞬、部室が静かになります。
悠真がリンを見る。
リンも彩花を見る。
彩花は続けました。
「リンと悠真がスカートだからBOYISH、じゃないでしょう?」
リン。
「まあ、そうですね」
「だったら、もっとカジュアルに行きましょう」
陽太。
「カジュアル?」
彩花は机の上へ数枚の資料を置きました。
そこには、海老楽市に本社や工房を持つアパレルメーカー、若手デザイナー、小さな縫製工房などの名前が並んでいました。
海老楽市の服を着る
彩花の提案は単純でした。
BOY&BOYISH 4が衣裳を買うのではなく、
地元のアパレルメーカーやデザイナーと一緒につくる。
それもステージだけの派手な衣裳ではありません。
普段の地域活動でも着られる服。
商店街を歩ける。
子どもと遊べる。
清掃活動にも使える。
大学へそのまま着ていける。
そんな服です。
彩花。
「海老楽市にも、ちゃんと服を作ってる会社があるのよ」
蓮。
「地元ブランドですか」
「そう。それに、若いデザイナーもいる」
カイルはすぐに反応します。
「それ、いいな」
「衣裳」ではなく「街の服」
カイルはホワイトボードに書きました。
ステージ衣裳
そして、その文字を消します。
代わりに、
海老楽スタイル
と書きました。
陽太。
「また名前つけた」
カイル。
「名前は大事だよ」
彩花は笑いながら、
「でも今回は、衣裳って呼ばない方がいいかも」
と言いました。
「私たちが特別な服を着るんじゃなくて、この街で作られた服を着るの」
リン。
「街の服を着て、街を歩く」
「そう」
地元メーカーとの打ち合わせ
数日後。
地域活動部の六人は、海老楽市内のアパレルメーカーを訪れました。
そこは大企業ではありません。
地元で何十年も続く縫製会社でした。
制服、作業着、スポーツウェアなどを作ってきた会社です。
社長は四人を見るなり、
「テレビで見てるよ」
と笑いました。
彩花が企画を説明します。
「今回は、いわゆるステージ衣裳をお願いしたいわけではないんです」
社長。
「じゃあ、何を作るんだい?」
彩花。
「海老楽市の学生が、本当に着たくなる服です」
社長は少し驚いたあと、
「それなら面白い」
と言いました。
若手デザイナーも参加
さらに、市内で活動する若手デザイナー二人も加わりました。
一人はスポーツウェアが得意。
もう一人はユニセックスなカジュアルウェアを中心に制作しています。
最初の打ち合わせで、デザイナーが聞きました。
「BOY&BOYISH 4といえば、スカートのイメージが強いですが」
彩花は首を振ります。
「そこを固定したくないんです」
リンもうなずきました。
「スカートは好きです。でも、それだけが俺じゃないので」
悠真も続けます。
「俺も同じです。パンツの日もあれば、スカートの日もある。それでいいと思います」
デザイナーはメモを取りながら、
「なるほど」
と笑いました。
4人それぞれの服
デザインの方向性は、全員同じ服にするのではなく、
同じシリーズの中で、それぞれ違う服を選べる
という形になりました。
陽太
動きやすいテーパードパンツ。
軽いジャケット。
シンプルなTシャツ。
身体を大きく使う陽太らしく、余計な装飾は少なめ。
リン
ロングシャツ。
細身のパンツ。
ワイドパンツ。
時にはプリーツスカート。
その日の活動に応じて自由に選びます。
蓮
落ち着いたワークジャケット。
ストレートパンツ。
ポケットが多く、地域活動で使いやすい実用型。
悠真
ショートパンツ。
カーゴパンツ。
プリーツスカート。
軽いブルゾン。
動きのある服を中心に組み合わせます。
共通点はひとつだけ
四人の服はバラバラ。
ただし、一つだけ共通するものがありました。
胸元の小さな刺繍。
EBIRAKU
海老楽市の名前です。
大きなBOY&BOYISH 4のロゴではありません。
大学名でもありません。
街の名前だけ。
リンがそれを見て言いました。
「これくらいがいいですね」
彩花。
「でしょう?」
商店街で初披露
新しい服の初披露は、ライブではありませんでした。
商店街の春イベント。
四人は新しい海老楽スタイルで、テント設営を手伝っていました。
陽太はパンツ。
リンはワイドパンツ。
蓮はワークスタイル。
悠真はショートパンツ。
スカートは一人も履いていません。
しかし、子どもがすぐに気づきます。
「BOY&BOYISH 4だ!」
悠真。
「服違うのによく分かったな」
子ども。
「顔で分かるよ!」
一同、大笑い。
「スカートじゃなくてもBOYISH」
その日の午後。
地域住民からこんな声が出ました。
「リン君、今日はスカートじゃないのね」
リンは普通に答えます。
「今日はこれです」
「似合ってるよ」
それだけでした。
以前なら、
「どうして男なのにスカート?」
と聞かれていた。
今はもう、
今日は何を着ているか
の話になっていました。
悠真があとで言います。
「リン先輩、これ結構大きいですよね」
リン。
「何が?」
「スカートじゃなくても、誰もBOYISHじゃなくなったなんて言わない」
リンは少し考えてから笑いました。
「そりゃそうだろ。俺は俺だから」
地域産業とのつながり
新しい服は予想以上に評判になります。
「そのジャケットどこの?」
「市内で作ってるの?」
「一般販売しないの?」
問い合わせが増えました。
そこでメーカーとデザイナーは、
BOY&BOYISH 4専用衣裳ではなく、
一般向けの地域ブランドライン
として展開することを検討し始めます。
大学生向け。
高校生向け。
高齢者でも着やすいもの。
スポーツ向け。
地域イベント用。
一つの企画が、地元の仕事へつながり始めました。
彩花の狙い
カイルが聞きます。
「彩花、最初からここまで考えてた?」
彩花。
「半分くらい」
「半分?」
「服って、着る人だけのものじゃないでしょう」
作る人。
縫う人。
売る人。
デザインする人。
着る人。
見る人。
その全部がつながる。
彩花は言いました。
「だったら衣裳だって、地域活動にできるじゃない」
BOY&BOYISH 4の新しい考え方
その後、ユニットには新しい方針が加わりました。
服装を固定しない。
スラックスでもいい。
スカートでもいい。
デニムでもいい。
ワークウェアでもいい。
スポーツウェアでもいい。
大切なのは、
何を着るかではなく、その服で誰と何をするか。
リンのスカートは、BOY&BOYISHの大切な歴史です。
でも、それを制服のように固定する必要はない。
悠真も同じ。
好きなときに履けばいい。
そして彩花の記事
その夜。
彩花は地域活動部のブログを更新しました。
タイトルは、
「衣裳から、街の服へ」
最後にこう書きました。
BOY&BOYISHは、服装の違いから始まったユニットでした。
でも、活動を続けて分かったことがあります。
自分らしさは、一つの服に固定されるものではありません。
スカートの日もある。
パンツの日もある。
ジャケットの日もある。
作業着の日だってある。
そして、その服を地域の人たちと一緒につくることもできる。
衣裳だったものが、
今度は地域の産業につながりました。
こうしてBOY&BOYISH 4は、
「何を着るか」で注目されたユニットから、
「地域と何をつくるか」で知られるユニットへ
また一歩、変わっていきました。






