【1280号】BOY&BOYISH設定~BOY&BOYISH、BOY&BOYISH 4の方針が固まった日 令和080918
BOY&BOYISH 4の方針が固まった日
「人気者になる」より、「地域に残る」
BOY&BOYISH 4が形になり始めたころ、カイルは一度、六人全員を地域活動部の部室に集めました。
陽太、リン、蓮、悠真。
そして彩花。
机の上には、イベント出演の依頼書、海老楽テレビの収録予定、地域行事のチラシが並んでいました。
ユニットとしての知名度は、すでにかなり上がっていました。
もし望めば、もっと派手にできた。
大きなステージ。
凝った衣裳。
ファン向けイベント。
グッズ展開。
大学生ユニットらしく、もっと騒がしく、もっと華々しく見せることもできた。
でもカイルは、それを選びませんでした。
カイルの方針
カイルはホワイトボードに、大きく二つ書きました。
「芸能アイドル」
「地域活動」
そして後者に丸をつけます。
「俺たちは、前者を目指さない」
悠真が聞きました。
「有名にならないってことですか?」
カイルは首を振ります。
「有名になってもいい。でも、有名になることを目的にしない」
蓮も静かに聞いていました。
カイルは続けます。
「BOY&BOYISH 4が一番大事にするのは、地域の人が近く感じられること。
商店街のおばちゃんが普通に声をかけられる。
子どもが手を振れる。
高齢者が名前を覚えてくれる。
そういう距離を失わないこと」
彩花もうなずきます。
彼女の広報も、もともとその方針でした。
華々しい宣伝より、
「今日はこの商店街に行きました」
「この施設のみなさんと交流しました」
「こんな人に出会いました」
という記録を大切にしてきたからです。
「学生らしさ」と「ふざけすぎないこと」
もちろん、四人は大学生です。
練習では笑う。
失敗もする。
移動中にはくだらない話もする。
でも、外に出たときは別でした。
地域活動部の名前。
海老楽大学の名前。
BOY&BOYISH 4の名前。
それを背負っていることを、四人とも理解していました。
イベント先で悪ふざけしない。
誰かを笑いものにしない。
SNSで軽率なことを書かない。
注目を集めるためだけの奇抜な行動もしない。
同年代らしい勢いはあっても、はみ出すことを格好いいとはしない。
この方針を最も強く言ったのは、意外にもリンでした。
リンの言葉
ある日の打ち合わせ。
出演先での振る舞いについて話していたとき、リンがいつになく真剣な表情で言いました。
「俺は、絶対に裏切りたくない」
全員がリンを見ます。
リンは少し間を置いて続けました。
「最初、家族だって俺のスカートをすぐ理解したわけじゃない」
部屋が静かになります。
「親は心配してた。
男がスカート制服で活動して、変な目で見られないかって」
陽太は、そのころのことを知っていました。
リンはさらに続けます。
「でも、地域の人が受け入れてくれた。
俺の親も、その姿を見て応援してくれるようになった」
そして、四人を見渡しました。
「だったら、その人たちを裏切るようなことは絶対しちゃ駄目だと思う」
悠真は黙って聞いていました。
自分がリンに憧れてスカートを選んだこともあり、その言葉は特に重く響きました。
リンは言います。
「俺が好きな格好で活動できるようになったのは、俺一人が強かったからじゃない。
陽太がいて、家族が理解してくれて、地域のみんなが普通に受け入れてくれたからだよ」
さらに、
「だから、人気が出たからって調子に乗るとか、ふざけて信頼をなくすとか、そういうのは嫌だ」
最後にはっきり言いました。
「俺たちを受け入れてくれた人たちを裏切るな。」
その言葉は、その場にいた全員に残りました。
陽太の反応
陽太はしばらく黙っていました。
そして、
「俺も同じ」
とだけ言いました。
陽太にとっても、BOY&BOYISHは単なるステージ活動ではありません。
中学時代からリンを知っているからこそ、今のリンが地域で普通に受け入れられていることの意味をよく分かっていました。
「ここまで来るのに、結構いろんな人が関わってるからな」
その一言で、話は決まりました。
蓮と悠真
蓮は、
「先輩たちが作った信頼を、僕たちが壊すわけにはいかないです」
と答えました。
悠真も、
「僕、リン先輩を見てここに来ました。だから、その理由までちゃんと引き継ぎたいです」
と続けます。
リンは少し照れたように、
「そんな大げさじゃなくていいよ」
と言いましたが、
彩花がすぐ、
「さっき一番大げさなこと言った人が何言ってるの」
と笑いました。
部室に少しだけいつもの空気が戻ります。
BOY&BOYISH 4のスタイル
こうして、BOY&BOYISH 4の方向性ははっきり決まりました。
派手さより、親しさ。
騒がしさより、信頼。
スターとファンという距離より、
「また来たね」と言ってもらえる関係。
ステージでは歌う。
踊る。
歓声ももらう。
でも終われば商店街を歩き、地域の人に頭を下げ、子どもと話し、高齢者の声を聞く。
それが四人の活動でした。
カイルは後に、この方針を短くまとめています。
「BOY&BOYISH 4は、地域の外から光を当てるユニットじゃない。
地域の中にいて、一緒に明るくなるユニットでいい。」
彩花も広報記事にこう書きました。
人気より先に、信頼がある。
信頼の上に、歌とダンスがある。
そして四人も、その順番を忘れませんでした。
BOY&BOYISH 4に華々しさがなかったわけではありません。
ただ、その華やかさは、遠くから眺めるためのものではなかった。
地域の人が手を伸ばせば届くところで輝く。
それが、この四人のいちばん大切なスタイルになったのです。




